設計事務所の信頼度が下落

先日(社)日本建築士事務所協会連合会が「設計事務所に関する全国電話世論調査」を行いその結果,38%の人が「設計事務所は信頼できない。」という厳しい数字が出ていました。

更に設計事務所の信頼感を高める為に必要な事の質問を行って,出てきた主な回答は2つでした。「情報公開」が38%で,「教育強化」が33%になっていました。

私の感想としては設計事務所の信頼感を高めるために必要な事の1位が「情報公開」とは意外でした。多分昨年の「耐震偽装事件」の影響が大きかったのではと思います。

特に「構造計算書」は私の様な「意匠設計者」は内容を見ても最後のページの結果しか分りませんので,素人の方では全く内容は理解できないと想像致します。多分この「構造計算書」の内容を判り易く「情報公開」して欲しいので「情報公開」が今回の世論調査で1位になったのではないかと思います。

次に設計事務所が信頼感を取り戻すために必要な事の2位は「教育強化」でしたが私はこの方が大事だと切実に感じています。私が大学を卒業して入社した大手設計事務所では新人教育として毎週,週に1回夜,勤務時間後に「1年生研修」「2年生研修」「3年生研修」を実施していました。理由としては大学の建築学科を卒業しても,ほとんど実際の設計業務には役に立たないので,その設計事務所では設計の初歩の手ほどきである「設計のイロハ」から教えてくれました。

いまでも私にとっては大切な「宝」です。最近の大手設計事務所ではこの様な新人研修をしている会社は2~3社しか有りません。それをするにはお金がかかりますし,新人も直ぐ実戦部隊に入れてOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)での教育です。私は設計業務に携わる人には研修は絶対に必要だと思っています。

やはり経験豊富な「修羅場」を何度もくぐりぬけた先輩がクレームの出ない建物を設計する様な教育をするべきですし,それが施主や入居者への信頼感にもつながります。

建築の設計では例えば線を1本引き間違えたら何千万円という改修工事になる事さえ有るのです。私は常に設計業務は経験の多さが大切で「経験工学」が大切だと言っていますが,まさに今回の世論調査でそれが実証されたのです。

現在設計事務所は大小かかわらず猫の手を借りたいほど忙しくて金銭的にも余裕が無いのも事実です。1物件当りの設計料収入が少ないので,物件を沢山受注して何とか給料を払っているのが現状です。

特にマンションの設計料は少ないです。どのディベロッパーも一律で工事費の3%です。総戸数60戸のマンションで工事費は約10億円ですから設計料は約3千万円です。これが総戸数100戸のマンションですと工事費は約16億円強ですから設計料は約5千万円です。

60戸のマンションと100戸のマンションの設計の手間(原価)はほとんど変りません。100戸のマンションの設計を受注した方が収入が多く研修費用の一部に使えますが大手設計事務所が受注してしまい,60戸のマンションの設計は中小の設計事務所が請けて研修等を行う余裕も無いのが現実です。

だからと言って研修教育をしない理由にはなりません。

私共,設計者がクレームの出ないマンションを設計及び工事監理を行って, 早く皆様の信頼を取り戻す様に努力したいと思います。

連載コラム

特集

もっと見る