「構造計算書」偽造事件について

11月18日(金)の新聞の朝刊を見て愕然と致しました。同じ建築家として恥ずかしい行為であり,入居者の命までも危険にさらさせて平然としている姉歯氏の態度に腹が立ちました。

色々な新聞の内容を隈なく隅々まで見てから,友人の構造設計者に電話をかけ,この手の込んだ偽造手口を詳しく語ってもらいました。

簡単に説明致しますと今回の事件は構造計算書は合法の物を提出し,構造設計図はそれとは全く整合していないという事です。

建物は構造計算書を見て建築する訳ではなく,構造設計図通りに躯体(骨格)を作る訳です。

私は約30年建築の意匠設計の経験は有りますが,構造計算書のチェックが可能かと問われますと自信はありません。しかし構造設計図をチェックする事ができますかと聞かれれば, 可能だと言えます。

約30年も建築の意匠設計を行っていますと当然各物件の構造図は良く見て構造設計者との折衝の経験は多数持っております。

私の現在行っている「現地同行」サービスでも構造図のチェックを行っています。

構造図をみて柱,大梁,小梁,地中梁の大きさや鉄筋の配筋図のチェック,耐震壁の厚さ,バランスや配筋図のチェックは行っています。

意匠設計が専門でも30年も建築設計の経験があれば,この柱の大きさが少し標準より細いかなとか,柱の中に入っている鉄筋の本数が少ないのではとか,鉄筋の太さが細いのではないか程度の事は分かります。

当然,ゼネコンの現場所長クラスになれば私と同様にその位の事を見る目は持っていなければ失格です。

ゼネコンの現場所長が構造設計図を見て何か違和感を感じましたら,自社の構造設計者に再度検証させるべきです。一流のゼネコンであれば当然そうして自己防衛しています。

私が元在籍していた大手設計事務所の構造設計者は安全志向なので建築基準法ギリギリの構造設計(構造計算)はせず,安全率を1.2倍程度確保して設計していました。

彼等の構造設計をマンションディベロッパーに提出してゼネコンから工事費の見積りを取りますと躯体費用が通常より1割程度高く出てきてよく嫌な顔をされました。

建築基準法の構造規準は建物が震度6~7程度で崩壊しないぎりぎりの最低規準です。

三流ディベロッパーですと直ぐに「構造計算の安全率は1で良いから躯体費用が下がる構造設計にしてくれ。さもないとこの物件の設計は意匠設計だけをおたくの会社に依頼して構造設計,電気設備設計,給排水衛生設備設計はゼネコンに御願いして工事費が究極までに下がる様にしてもらいます。」とよく脅されました。

躯体(骨格)や設備等,購入者に見えない所は究極まで仕様を落としコストダウンをする様に暗黙にプレッシャーをかけてきます。

一流ディベロッパーは「当社の設計規準書を守って,工事費が予算内に納まる様な設計をして下さい。」としか申しません。

今回の事件は「姉歯建築設計事務所」が巧妙な手口で「イーホームズ」に確認申請を提出し,その巧妙な手口に気付かずに審査を通し,ゼネコンもその構造図を見て何の疑問も抱かずに工事をしてしまった事が悲劇を招きました。

一番悪いのは構造設計者ですが後の2社の目は節穴としか言いようが有りません。

今回の様な事件は建築業界では氷山の一角だと言う人が結構居ます。私も若干その様な気が致します。

尚,「イーホームズ」は「住宅性能評価」の審査も行っている会社ですので,この様な事が起きると「住宅性能評価」の審査にも疑問を感じ得ません。

まあ私は「住宅性能表示制度」自体矛盾だらけの法律だと思っていますのであまり当てにはしておりません。

建築業界の質はピンとキリの差が大きく,なるべくピンの物件に出会って購入され今回の被害者にならない様に注意してください。私はそのお手伝いを致しております。

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