まともな工事費のネゴ・調整はどの様にされているか…。

今回は,前回のこのコラム478号『 また復活した,住戸内の窓枠がクロス巻き込み仕様は如何なものか… 』の中で「 まともな売主や設計事務所は工事費のネゴ・調整で住まいとして重要な個所の仕様は無節操にコストダウンの対象としておりません 」と御説明致しましたので『 まともな工事費のネゴ・調整はどの様にされているか 』を具体的にお話し致します。

通常,新規分譲マンションは商品企画,基本計画,基本設計が売主( クライアント )に承認され,その後実施設計が完了致しますと,ゼネコンに工事費の見積りを依頼致します。そして2~3週間後にゼネコンより工事見積書が提出されます。その提出された工事見積書は大抵,売主の当初の予定工事費より約10~20%程度価格が高く出てきます。

その後,売主,設計事務所がゼネコンの見積書の査定を行い,ネゴ( ネゴシエーション )を行います。

それでもゼネコンの工事費が下がらない時はゼネコンにVE( バリューエンジニアリング:目的の性能や機能を低下させずに,全く別の方法や手段を提案してコストダウンを行い,総合的な価値を保つ事 )案の提出を求めます。ゼネコン提出のVE案の精査を行いゼネコンの持っているノウハウで工法等を変更して工事費を下げます。

通常はここで売主の予定工事費にほぼ合致いたしますので,ネゴ完了となり工事契約をし,着工となります。

これが「 まともな工事費のネゴ・調整 」業務です。

処がゼネコンのレベルが低いとゼネコンからのVE案はほとんどが無節操な仕様ダウンのみの内容になってしまうのです。ちなみにゼネコンが設計した場合にはこのケースが多いのです。

その状況に陥らない様に,クライアントはゼネコンから出てきました見積書の査定業務が可能で,工事費のネゴ・調整が適格にできます大手設計事務所に設計と工事監理を依頼するのです。

しかし最近,大手設計事務所でもマンションの設計及び工事監理の報酬が安く,人件費を切り詰めなければ赤字になりますので,ゼネコンより提出された,無節操な仕様ダウン案を受け入れる大手設計事務所が多い傾向になっています。

更に中小の設計事務所にとっては安い設計報酬で委託されて赤字を出しましたら,死活問題なのです。

しかし,大手設計事務所は公共工事等の設計及び工事監理を高い報酬で委託されて,そちらでかなりの利益が出ていますので,大手設計事務所の名前を汚さぬ様に多少人件費がオーバーになっても「 まともな工事費の査定及びネゴ・調整 」を行う姿勢を矜持すべきだと私は思います。

自画自賛になってしまいますが,私は大手設計事務所在籍していた時にマンションの設計では常に自己防衛をして,住まいとして重要な個所の仕様は無節操にコストダウンの対象にならない様にしていました。

具体的には,マンションの外観や住戸内のデザインをオーバーデコレイティブ( 過剰に装飾 )するのです。本来,私のデザインポリシーは「 シンプル & エレガンス 」( 簡素で上品 )なのですが,オーバーデコレイティブデザインにしてネゴ代( ネゴしろ )分を確保していました。

その訳は,海千山千のゼネコンといえども,工事費のネゴ・調整の打合せ時点では,大手設計事務所が設計した建物のデザインに関しては,ネゴ対象に致しません。建物のデザインに関する個所をネゴ対象にする事は設計事務所の品格や設計者( デザイナー )の人格を傷つける事になるから御法度なのです。

設計者にとっては本来のデザインよりもオーバーデコレイティブデザインにしてネゴ代を確保する事はとても有効な戦略で,ゼネコンとの工事費のネゴや,設計図書の不完全な個所の追加工事費用に使えました。

このコラムをお読みになっている建築家( 設計者 )の方々,ディベロッパーの方々やマンションの購入を検討されている方々の参考になれば幸いです。

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