2013年の新規分譲マンションの傾向について

今年はこのコラム461号が最後になりましたので,2013年の新規分譲マンションの傾向を建築家としての目で振り返ってみて感じた事を大雑把に申し上げたいと存じます。

まず,良い傾向は1点ございますので御説明致します。

それは,エントランスアプローチ等共用部分や住戸内の手摺設置等で「 高齢者等対応への配慮 」を密にしていましてとても良い事だと感じております。

次は改善して戴きたい傾向は2点有ります。

まず1番目は中高層( 高さ60メートル以下 18階以下 )のマンションに於いて,軽量化を図るという名目で,外部の耐久性や耐候性をおろそかにしている物件がかなり多く,その事が私の印象に残りました。

具体的に申し上げますと,マンションの外壁の仕様です。かなりの中高層新規分譲マンションの外壁の大部分が鉄筋コンクリート造ダブル配筋の仕様では無く,ALC版を採用している事でした。

その様なマンションの設計者に本当の理由を聞きますと「 軽量化し構造部分の工事費を安くする為です。」と回答してきました。

その回答に対して私は「 では何故,妻側の外壁の仕様だけ鉄筋コンクリート造ダブル配筋にしているのか?妻側の外壁の仕様もALC版にすれば,もっと軽量化できますし,構造部分の工事費を下げられるのではないのですか? 」と再質問致しましたら,その設計者の回答は「 碓井さんも御存知の様に妻側にはバルコニーや外廊下が無いので直に風雨にさらされています。ですので外壁の耐久性及び耐衝撃性を高める為に鉄筋コンクリート造ダブル配筋にしています。 」と何の拘りも無く説明されたのには驚愕の念を禁じ得ませんでした。

私はその設計者に更に「 バルコニーや外廊下に面した住戸の外壁も直に風雨にさらされていますよ。バルコニーや外廊下の手摺より僅か2メートル弱後退した位置に住戸の外壁は設置されているのですからね…。購入者( 入居者 )の事を配慮致すならば当然耐久性及び耐衝撃性の良い鉄筋コンクリート造ダブル配筋仕様で誘発目地を幅約3メートル以内に設けるのが,設計者の良心ではないですか? 」と申し上げました。

その私の発言に対して,その設計者は「 私も本音は碓井さんが言われる通り,外壁の仕様はその様にしたかったのですが,事業主( 売主 )からの指示ですので,それを拒否すれば設計の仕事が貰えないと思い,拒否できませんでした。 」と情けない回答をしてきました。

これが,先程申し上げた,中高層の新規分譲マンションの外壁の大部分が鉄筋コンクリート造ダブル配筋で幅約3メートル以内に誘発目地を設ける仕様では無く,ALC版を採用している事の実情です。

この傾向は明らかに,購入者( 入居者 )を軽視しているのではないかと思います。この私の主張を裏付けるが如く,ほとんどの超高級マンション( スーパー億ション )の外壁は全てが鉄筋コンクリート造ダブル配筋で幅約3メートル以内に誘発目地を設ける仕様にしています。

外壁の仕様はマンションの耐久性及び耐衝撃性の良さを測るバロメーターだと思いますので,中高層のマンションの外壁にALC版を採用する風潮は改めて欲しいと思います。

ちなみに以前このコラム13号『 マンションの外壁はダブル(複列)配筋のコンクリート壁が良い。 』に理由を詳しく書いていますので,御覧下さい。URLは以下です。

https://s.sumai-surfin.com/columns/category/50/13

2番目はやはり中高層のマンションの住戸間の戸境壁の仕様も鉄筋コンクリート造ダブル配筋仕様でなく「 乾式工法 」を採用されている物件が数多く見受けられた傾向です。

「 乾式工法 」仕様の戸境壁は鉄筋コンクリート造ダブル配筋で厚さ18センチ仕様の戸境壁よりかなり遮音性能が劣りますので,外部の暗騒音( その環境における騒音 )が低くなる夜間は隣戸の音が伝わって聞える可能性が結構高いのです。

この事も以前,コラム14号,15号『 マンションの隣戸間の戸境壁の仕上げについて。-1,2 』で詳しく説明させていただいたので御覧下さい。URLは以下です。

https://s.sumai-surfin.com/columns/category/50/14

https://s.sumai-surfin.com/columns/category/50/15

そして,上記2点に関してコラム57号『 構造費用を安くしている見分け方。 』にも分り易く説明いたしておりますので,そちらも御覧下さい。URLは以下です。

https://s.sumai-surfin.com/columns/category/50/57

2013年の新規分譲マンションの傾向で特に目立ちましたのが「 高齢者等対応への配慮 」「 外壁の仕様 」と「 戸境壁の仕様 」の3点です。

この改善していただきたい2点は将来に渡ってリノベーションが不可能に近い箇所です。事業主( 売主 )の方々に是非改善していただきたい事項ではないかと思いますが如何でしょうか…。

ここで私が大学を卒業し入所した,大手設計事務所の先輩が言われた事を思い出します。
先輩が言われた事は「 金と時間が有れば建築に不可能は無い。 」という事です。

分譲マンションの事業主( 売主 )は完売すれば,総販売金額の20%~30%が粗利益として入ってくるのですから,粗利益を若干減らしてでも,その分のお金を建築物の骨格の充実に充当していただければ幸いと存じます。

マンションは人間が暮らす「 住まい 」としての建物です。

2014年には,その建物の大切な骨格を改善されたマンションが増加する傾向を期待しております。

皆様,どうぞ良い御年をお迎え下さい。


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