「 吊りレール型引戸 」の進歩

今回は柔らかいお話を致します。

私は近代建築家の巨匠 ミース・ファン・デル・ローエが残した「神はディティールに宿る」という名言が好きです。このコラム194号「神はディティールに宿る」を御覧下さい。
URLは下記です。
https://s.sumai-surfin.com/columns/category/50/194

特に人間が住まう住宅( 住まい )に於いては,ディティールへの配慮は大切です。

時々,私は建築金物のカタログを取り寄せて,人間に優しい配慮が有る新しい建築金物を探しています。

先日,ある建築金物メーカーが「 吊りレール型引戸 」用の新作の「 吊りレール 」を発売致しましたので,皆様にお伝え致します。

まずは,引戸の種類の御説明を致します。引戸は大きく分類致しますと「 床レール型引戸 」と「 吊りレール型引戸 」が有ります。

「 床レール型引戸 」とは読んで字の如く,床にレールを敷きその上を車輪が「 ゴロゴロ 」と音を立てて動く引戸です。マンションでは「 床レール型引戸 」を夜遅く開閉しますと,先程の車輪の「 ゴロゴロ 」音が下階住戸に伝わり,あまり芳しくないのです。

そこで,良心的なディベロッパーは住戸内の引戸は「 吊りレール型引戸 」を採用致します。
「 吊りレール型引戸 」とは懸垂型のモノレール( 電車 )の理論で作られた引戸です。

「 吊りレール型引戸 」を更に詳しく申し上げますと,引戸扉枠の上部横枠( 鴨居 )の中にボックス型のカーテンレールを大きくした様なレールが埋め込まれております。そのレール内部に樹脂製の車輪が走り車輪を支えている台車にボルトが下向きに付いており,そのボルトで扉を吊って引戸を開閉させている仕様です。なので「 ゴロゴロ 」音はほとんど出ません。

そして「 吊りレール型引戸 」は「 床レール型引戸 」に比べて非常に軽く動くという事が特徴です。

高齢者や小さな御子様でも楽に開閉できる事は良いのですが,通常の大人がチョット強く開閉致しますと,引戸扉の縦枠に接した時に「 ドーン 」と音が出てしまいます。この音も夜遅く静かな時には隣戸に伝わり,迷惑をかける場合が多々生じています。

そこで,5~6年前に建築金物メーカーは引戸を閉めた時,引戸扉の縦枠に扉が接する前に「 吊りレール 」内の車輪を支えている台車に自動的にブレーキをかける装置を設置して「 ソフトクローズ 」する仕様に致しました。これで「 吊りレール型引戸 」を閉めた時の「 ドーン 」音は解消致しました。処が「 吊りレール型引戸 」を勢いよく開けた時には戸袋側の扉縦枠に接した時の「 ドーン 」音は解消致しませんでした。

建築金物メーカーも最近やっとそれに気付き「 吊りレール 」内の車輪を支えている台車に自動的にブレーキをかける装置を「 吊りレール 」内の両端に設置した製品を売り出したのです。

私は,この製品に依って「 吊りレール型引戸 」の開閉時点の音は飛躍的に解消されると思っています。メーカーにとっては進歩した良い「 吊りレール 」を発売致しましたが,価格がいままでのものよりも,約3~4千円位高くなりますので,売れるかが心配だと察します。

特に三流のディベロッパーは,その様な音に対する配慮に欠けていますので,未だに価格( 工事費 )の安い「 床レール型引戸 」を採用し「 ゴロゴロ 」音や縦枠に引戸が当たる「 ドーン 」音に関しては全く気にしていない様です。

一流のディベロッパーでも「 吊りレール型引戸 」のブレーキ装置付き「 吊りレール 」を採用し出したのは約3~4年前頃で,片方( 閉める方 )だけブレーキ装置が付いているものです。

今後この進歩した,音の出ない「 吊りレール型引戸 」用の「 吊りレール 」で両端にブレーキ装置設置のものがどの程度採用されるかが,ディベロッパーの良さの指標になるのではないかと思っています。

マンション設計者の方々「神はディティールに宿る」を肝に銘じて下さい。そして購入者より音のクレームの出ないマンションを設計をされる事を同業者として願っております。

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