CADに依るマンション設計への弊害

今回はマンションの設計・製図についてのお話を致しましょう。

約20数年位前より大手設計事務所や大手ゼネコンの設計部ではマンションの設計・製図にCAD( Computer Aided Design )を導入していました。

まずCADとはどの様なものかを大雑把に御説明致します。

建築分野のCADとは人の手によって行われていた設計作業をコンピュータによって支援し,効率を高めるという優れ物なのです。

CADを用いるメリットは繰り返し図形をコピーで作れるので効率的に作図が可能である事,類似図面の作成が容易な事,コンピュータが持つデータから寸法を記入する為に単純な寸法ミスを無くせる事,設計途中での寸法や面積の測定により手計算の手間を省ける事や設計したデータは大型のプリンターに出力するので細部まで正確な作図が可能な事です。

上記のメリットを最大限活用致しますと特にマンション設計者にとってはとても有り難いものです。

その理由は通常の「 羊羹の輪切り型 」マンションの住戸プランを作成する時はかなり楽なのです。

具体的に簡単に申し上げれば,以前評判が良く克つ売れ行きが良かった数種類の「 田の字型 」住戸プランを「 羊羹の輪切り型 」マンションの中に寸法調整し,貼り付けていけば良いのです。

ですので,この処全くと言って良い程,新しい「 ライフスタイル提案型 」住戸プランのマンションが出て来ないのです。

その原因としては,現在マンションの設計・監理報酬はほとんどのディベロッパーが建築工事費( 電気設備,給排水設備や空調換気設備費用を含む )の3%以下ですので,マンション設計業務と工事監理業務を致しましても人件費と経費がやっとツーペイできる金額です。
小規模( 総戸数50戸以下 )で建築工事費が安い( 7億円以下 )マンションの設計・監理報酬( 2000万円以下 )では,大手設計事務所は赤字になってしまいます。

特に設計・監理報酬に占める人件費は大きいので,なるべく人件費を減らさないと,小さな設計事務所( 所員10人以下 )は食べていけません。下手をすれば「 ドボン 」( 倒産 )です。この処,小規模な設計事務所はかなり「 ドボン 」して減っています。

私の経験では三流大手ディベロッパーの商品企画会議に出た場合,私共設計者はほとんど無言でディベロッパーの言うなりに設計した方が人件費が少なくて済みます。商品企画会議ではディベロッパーは過去の売れ行きの良かった住戸プランを推薦してきますので設計者が良い住戸プランの提案をするより「 ハイハイ 」と言ってその指示通りのマンションを設計及び工事監理した方が人件費は格段に少なくて済むのです。

しかし,一流大手ディベロッパーは設計・監理報酬を建築工事費の3%以上で承認し,契約してくれますが,商品企画会議では設計者と一緒にコンセプト創りから始め,コンセプトが固まればそれに見合った「 ライフスタイル提案型 」住戸プランの作成を依頼してきます。
ディベロッパーがその様な対応を設計事務所にしてくれれば,設計事務所も頑張って, 「 ライフスタイル提案型 」住戸プランの作成をして良いマンションを設計・監理できますが,最近ではレアーケースです。

ですので,設計監理報酬を建築工事費の3%以上払ってくれる一流大手ディベロッパーがほとんど無くなったので,マンションの商品企画がかなり悪くなっています。

その結果,最近のマンション設計者はコンピュータから過去の住戸プランを取り出してCADを使って貼り付けて作図完成なのです。

これではマンションの住戸プランが進化する事はまず無いと思います。

マンションの設計者も確認申請を申請し,認可を取る「 便利屋 」です。

私はこの現象を「 CADに依るマンション設計への弊害 」と言っています。

大手設計事務所( 所員100人以上 )や中堅設計事務所( 所員50人以上 )の設計者の方々,設計・監理報酬の中の人件費を上手に調整し,2013年にはマンションの設計で良い住戸プランを手書きで作成し,マンション業界で話題物件になる様にしてくれる事を望んでいます。

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