キッチンや洗面化粧台の天板が石材は使い辛い

この処,新規分譲マンションのモデルルームを見ますとキッチンセットや洗面化粧台のカウンター( 天板 )の仕様に御影石を採用している傾向がみられます。

今回はこの事について私の経験を踏まえて,苦言を呈し致します。

キッチンセットや洗面化粧台の天板の仕様に御影石等の石材を採用する事は,単に豪華さを演出する為であり,毎日の生活ではとても使い辛いのです。

御影石は吸水性がほとんど有りませんので,外部の仕上げには申し分ない材料です。しかし住まいの中での日常生活の上ではディメリットが多いのです。

特にキッチンセットの天板に御影石を採用いたしますと,高級な食器やグラスを置く時に丁寧に置きませんと直ぐに割れたり欠けたり致します。高級で高価なマイセンのグラスやロイヤルコペンハーゲン,ウエッジウッドやヘレンドの食器を御影石の天板に無造作に置きますと,簡単に割れてしまいます。

この件について,過去に私がバブル期の頃に設計致しました,1住戸約7億円という高価なマンションの購入者の奥様から呼び出されて注意を受けました。その注意は「 設計者さん,キッチンのカウンターの石が使い辛いのでもっと柔らかい材質に交換して下さい。」という事でした。

私は高級感が有って良いのではと思い採用したのですが,奥様曰く「 食器を雑に置くと直ぐに欠けたり割れたりするので,神経質になりストレスが溜まってしまいます。早急にもっと柔らかい材料に替えて下さい。 」と申され売主と相談致しまして,デュポン社のコーリアンという高価な石目模様のアクリル系人造大理石に交換致しました。

その奥様は更に「 孫が石に頭をぶつけて怪我をしたのですよ。石はぶつかると痛いし,冬場の朝は特に冷たいし,キッチンのカウンターに採用したのは設計ミスですよ。住まいの内装に石を使うのはタブーですよ。覚えておいて下さいね。 」と釘をさされました。

同じ,マンションの他の同価格住戸からも同様のクレームが有り,更に洗面化粧台の天板の御影石も柔らかい素材に交換して欲しいと言われました。理由は洗面化粧台カウンターの上にメディシンボックス( 洗面道具や化粧品などを収める収納 )が設置してあり,そこには化粧水のビンや整髪料のビン等が置ける様になっていたのですが,入居者の方が化粧水のビンを取り出す時に手を滑らせて洗面化粧台カウンターに落として割ってしまったという事です。

その方も洗面化粧台の天板がもっと柔らかければ割れずに済んだと,コンプレインしてきました。

この件も売主に報告して洗面化粧台の天板をデュポン社のコーリアンの石目模様のアクリル系人造大理石に交換致しました。

この物件の売主は「 モデルルームと同じですから交換するなら自費で御願い致します。 」と言う超大手ディベロッパーの慇懃無礼さは無く「 碓井さん,当社で承認して採用したのだから,当社で交換の工事費を払いますので,早急にゼネコンに指示してください。 」と設計者の責任にもせず,自社の信用を重んじるとても良い紳士的な会社でした。

私は上記の様に石材を住まいのカウンター的な所に採用すべきでは無いと,苦い経験を致しました。ですので,単に高級感を醸し出し,マンションの販売促進に寄与させる為に高価な御影石を使うのは,入居者への配慮不足なのです。

先日,戸建用の特注家具やキッチンを製作している知人に「 最近,新規分譲マンションのキッチンや洗面化粧台の天板に御影石を採用しているのが増えたね。 」と私が言いましたら,
知人は「 あれ!碓井さん知らないの…。あの御影石は中国産でとても安く入手できるのだよ。デュポン社のコーリアンより安いし,国産のアクリル系人造大理石とほぼ同じ価格だから,素人さんに見栄えの良い御影石を採用しているんだよ。 」と言われてしまいました。

売主にとっては材料費が同じならば,高級感が醸し出される御影石をキッチンセットや洗面化粧台の天板を採用した方が得なのが良く分りました。

本当に入居者側に立って日常生活に支障をきたさない配慮が有る売主であれば,キッチンセットや洗面化粧台の天板に御影石等の硬い石を採用しないと思います。

この件も売主の良し悪しの判断材料になるのではないかと思います。

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