建物の「 質 」がわかる重要な図面は…。

前回は『 購入者は物件の「 質 」を重視する傾向が高まった 』という内容で,私が建物の「 質 」をチェックするには「 設計図書一式 」の中より重要な図面を精査していますというお話でした。

そして,私が「 現地同行 」チェックを行う前には,依頼者より事前にディベロッパーへ販売事務所でチェックする「 設計図書一式 」には抜け,省きが無い完全な「 設計図書一式 」を用意して戴く事を依頼していますが,実際に販売事務所で「 設計図書一式 」を見ますと,見られたら都合の悪い「 質 」がわかる重要な図面等を省いて製本しているケースが最近やたら多い事を付け加えて前回皆様にお伝え致しました。

ちなみに,先日行なったある物件の「 現地同行 」チェックでのお話を致します。

この物件チェックも事前に「 設計図書一式 」には抜け,省きが無い完全な「 設計図書一式 」を用意して戴く事を依頼しておいたのですが,販売事務所に行き「 設計図書一式 」を見ましたら,重要な図面がほとんど綴じてなく,モデルルームチェックで何とか私のチェックリストに記入致しました。判定結果は「 秀 」「 優 」「 良 」「 可 」「 不可 」の内の「 可 」でした。そして,その依頼者は契約寸前でディベロッパーの社印が捺印された契約書まで持っていましたが,その物件の購入を取り止め書類一切を返却致しました。

その方は私に「 碓井さんに言われたとおりに事前に図面を省かないで全ての図面をチェックさせて欲しいと依頼しても,実際に販売事務所で見た“ 設計図書一式 ”は厚さも薄く重要な図面を省き,見せない様になっていましたね。この様な誠意の無い,隠蔽体質の売主の物件は購入したくないから購入を止めます。 」とおっしゃいました。

前回も書きましたが,この様な重要な図面が省かれている「 設計図書一式 」を販売事務所に置いているディベロッパーは隠蔽体質で,会社の「 質 」が悪いのです。会社の「 質 」が悪ければ自ずと分譲しているマンション( 建物 )の「 質 」も悪いのです。

さて,今回の本題である,建物の「 質 」がわかる重要な図面とは何かを御説明致します。

まず,チェックに必要である一番重要な図面は「 特記仕様書 」( とっきしようしょ )です。

「 特記仕様書 」は「 意匠図 」「 構造図 」「 電気設備図 」「 給排水衛生設備図 」「 空調換気設備図 」等おのおのの図面の最初の方に綴じてあります。「 特記仕様書 」とは,大雑把に申し上げますと,その物件の工事に用いる材料等の特定や,その工事の施工の納め方等が工事種別ごとに画かれた最重要図面です。

次に重要な図面は「 矩計図 」( かなばかりず )です。「 矩計図 」とは建物の垂直方向の断面を詳細に表した図面で,下地の寸法や細部の納まりまでをも具体的に画かれていますので,チェックするには重要な図面です。

まずは,この「 特記仕様書 」と「 矩計図 」が販売事務所に置いてある「 設計図書一式 」
に入って( 綴じられて )いるかを確認する事で売主の「 質 」が問われます。

あと,チェックに必要な図面でよく省かれていますのが「 仕上げ表 」「 建具キープラン 」と「 建具表 」です。

「 仕上げ表 」とは建物外部,共用部分内部や専有部分内部の仕上げ材等を表にしたものです。特に良くチェックした方が良いのは,住戸内の仕上げ材や下地材の種類等や備考欄です。備考欄には,例えば手摺の設置有無や手摺設置用の下地材の有無と仕様が細かく画いてあります,これまた重要な図面です。

そして「 建具キープラン 」とは各階の共用部や住戸等の全ての扉やサッシュに記号を付けた各階平面図状のものです。そして「 建具表 」はチェックする扉・サッシュ記号の欄にその記号の扉・サッシュの性能,大きさ,厚さ,仕様・仕上げや付属金物( 鍵等 )が細かく表になって画かれているものです。これもまた重要な図面です。

これら重要な「 特記仕様書 」「 矩計図 」「 仕上げ表 」「 建具キープラン 」と「 建具表 」が故意に省かれた( 抜けている )「 設計図書一式 」が置かれている販売事務所がかなり存在致します。

私は以前,ある超大手ディベロッパーα社物件の「 現地同行 」チェックを依頼され,現地に行き現地及び周辺をチェックしましてから,電車に乗ってその超大手ディベロッパーα社の港区にある常設販売事務所・モデルルームに行きました。常設販売事務所で依頼物件の図面チェックを致しましたら,重要な「 特記仕様書 」「 矩計図 」「 仕上げ表 」「 建具キープラン 」と「 建具表 」が省かれておりまして,見る事ができませんでした。

そこで,販売担当者に「 どうしてこの様な“ 設計図書一式 ”を置いておくのですか?これでは重要な部分が分りませんね。 」と質問致しましたら,販売担当者は「 当社の方針です。 」と回答してきました。その超大手ディベロッパーα社は隠蔽体質の「 質 」の悪い会社だと判断し,それ以来「 購入相談 」や「 現地同行 」チェック依頼者の対象物件がそのα社の分譲マンションの場合は購入は控える様にメールで無料でお伝えしております。

尚,超大手,大手や中堅ディベロッパーでも「 質 」の良い会社は販売事務所に完全な( 省き図面が無い )「 設計図書一式 」が置かれています。この様な会社が分譲しているマンションは建物の「 質 」が良いのです。設計者の私が断言致します。「 質 」の良い物件は図面で見られたら困る箇所などは全く有りません。自画自賛になりますが,私が今迄,30
年間,私の設計したマンションの設計図は全てディスクローズ( 公開 )しておりました。

これからマンションを購入される方に御注意申し上げます。分譲マンション購入は,何千万円という高額の買い物ですので,販売事務所に行かれたら「 設計図書一式 」を閲覧して「 特記仕様書 」「 矩計図 」「 仕上げ表 」「 建具キープラン 」と「 建具表 」が入っている完全な「 設計図書一式 」か否かだけでも是非,チェックして下さい。完全な「 設計
図書一式 」であればその建物の「 質 」は必ず良いと思います。

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