「 引戸 」への配慮

マンションのクレームの多くは遮音性の問題です。先日も私に隣の住戸の音が良く聞えるのでどうしたら良いか…との相談がありました。

特に最近の新規分譲マンションの約4割弱は,住戸間の「 戸境壁 」が「 乾式工法 」( ボードを組み合わせた耐火壁 )の壁になっていますので「 鉄筋コンクリート造 」の壁よりもかなり遮音性は落ちます。「 乾式工法 」の壁は設計時点では遮音等級の仕様が良くても,実際に施工後に計測致しますと,約2ランク弱等級が落ちます。建築工事は手作りなので,カタログ通りの遮音性能が出た事がほとんどありません。

さて,前置きが長くなってしまいましたが,今回本題の『 「 引戸 」への配慮 』に関連するお話でしたので御容赦下さい。

まず「 引戸 」には大雑把に分けますと,2種類有ります。1つ目は「 下レール型引戸 」で,もう1つは「 吊りレール型引戸 」です。

「 下レール型引戸 」は床にV字型のレールを組み込んでスライドさせる「 引戸 」で,開閉時に「 ゴロゴロ 」という扉の下に設置された「 コロ 」( 車 )音が下階住戸に伝わりますので,最近は評判が良く無いディベロッパーのマンション以外は見かけません。

ほとんどの新規分譲マンションの「 引戸 」は「 吊りレール型引戸 」を採用しています。「 吊りレール型引戸 」の方が開閉時に「 ゴロゴロ 」音が出ませんし,スライド時点でも小さな力でも軽く動かせられるので良いのです。

「 引戸 」の弱点は「 開き戸 」と比較致しますと閉めた時に扉枠にぶつかり「 ドーン 」と結構な音が致します。昼間はあまり気にならないのですが,夜遅く静かな時間帯には隣戸へその音が伝わりますので設計時点での配慮が必要なのです。

設計時点で「 引戸 」を閉めた時の「 ドーン 」という音をなるべく小さくする配慮とはどうする事なのかを具体的に御説明致します。

事前に申し上げておきますが「 下レール型引戸 」は「 引戸 」の木口( 枠にぶつかる面 )に直径約9ミリ,厚さ3ミリ弱程度の丸いスポンジを2~3枚貼るしか方法はありませんが気休めです。効果はほとんど有りませんので「 ドーン 」という音が発生致します。

処が「 吊りレール型引戸 」ですと,「 引戸 」の木口に直径約9ミリ,厚さ3ミリ弱程度の丸いスポンジを2~3枚貼ったうえに「 吊りレール 」の中に「 ブレーキ装置 」を設置して「 ドーン 」という音をほとんど発生させない様にできるのです。この「 ブレーキ装置 」を「 吊りレール 」内の扉枠近くに設置しておきますと,勢いよく「 引戸 」を閉めても「 ドーン 」という音はほとんど発生致しません。

マンションは集合住宅ですが,共同住宅でもありますので「 引戸 」の開閉音で隣戸と気まずい思いをしたくはありません。ですので,購入前にモデルルームで「 引戸 」を良くチェックして下さい。まず「 下レール型引戸 」か「 吊りレール型引戸 」か,そして「 吊りレール型引戸 」であれば「 ブレーキ装置 」が「 吊りレール 」内に組み込まれているかどうかです。

特に夜,暗騒音( 特定の場所にいたときに聞こえる周囲の雑音 )が低い静かな場所に建つマンションでは,このチェックは大切です。

PS:今迄にこのコラムで「 引戸 」に関して38号,39号,40号で『 住戸内の引戸の良し悪し-1,2,3。 』,201号で『 「引戸」の納まりは… 』を書いていますので,そちらも御覧戴ければ幸いです。URLは以下です。

https://s.sumai-surfin.com/columns/category/50/38
https://s.sumai-surfin.com/columns/category/50/39
https://s.sumai-surfin.com/columns/category/50/40

https://s.sumai-surfin.com/columns/category/50/201

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