「 引き分け戸型サッシ 」の盲点

今回は「 引き分け戸型サッシ 」の良い事と,問題点についてのお話を致します。

まず「 引き分け戸型サッシ 」とはどの様なものかから御説明致します。

「 引き分け戸型サッシ 」とは2枚のガラス戸を1本のレールに並べてスライドさせ,左右両袖側のFIX窓( 嵌め殺し窓 )サッシに引き分けて開ける方式のガラス戸で,2枚のガラス戸を開ける事に依って,大きく目一杯の開口がとれるものです。これが良い事なのです。

先日,見ました新規分譲マンションのモデルルルームのリビング・ダイニング( LD )から,バルコニーに出入りするサッシがこのタイプでした。2枚のガラス戸が左右に引き分けられて,ガラス戸2枚分の大きな開口が得られてとても開放的でした。

処が良く観察していましたら,何か物足りなく変だな…と思いバルコニー側に出ましたら,網戸が無いのです。早速,モデルルームに居た販売員に「 この掃出し窓サッシは網戸が無いのですか? 」と質問いたしました。販売員の回答は「 本来,網戸は実装されているのですが,モデルルームでは外しています。網戸が有りますと開放感が損なわれますのであえてそう致しました。 」でした。まさしくこれが問題点なのです。

モデルルームの見学者の方々はこのLDの「 引き分け戸型サッシ 」を見て,口々に「 開放感が有っていいね…。」と言っていました。誰も網戸が付けられた状態を想像していないのです。2枚のガラス戸が左右に引き分けて開けられて,ガラス戸2枚分の大きな開口部外側に網戸が有れば左程開放的ではありませんので…。デベにとっては,モデルルームで開放感を演出し,好評だった事は網戸を外した事が功を奏したのです。しかし,その様な事をしてモデルルームを見せるのはアンフェアーです。

網戸が実装されているのなら,2枚の網戸も引き分けて両袖のFIX窓外側に有るのが,フェアーだと思います。私はこのモデルルーム設営に関して,デベに対して不快な思いを致しました。

そして,更にこのモデルルームに設置されている「 引き分け戸型サッシ 」の大きな問題点を発見致しました。

それはこのマンションの「 引き分け戸型サッシ 」の引き分けガラス戸は両袖のFIX窓サッシの内側( 室内側 )にレールが有り,そこでスライドし,網戸は両袖のFIX窓サッシの外側( バルコニー側 )にレールが有り,そこに立て入れられてスライドする様になっていたのです。

具体的に問題点を申し上げます。この様にガラス戸用レールと網戸用レールが両袖のFIX窓サッシが間に入って離れていますと,引き分けガラス戸を1枚だけ開けて,その開口部分に網戸をスライドさせて配置しましても,両袖のFIX窓サッシ方立( ほうだて:建具を取り付けるために立てる縦長の角材 )の幅( 厚さ )分約5~6センチの隙間が上から下まで空き,蚊の侵入経路になってしまいます。ですので網戸が必要な時期は常に引き分けガラス戸を2枚共両袖側に開け,網戸も2枚共開口部の所に配置しませんと,蚊が入ってしまいます。

設計者の常識では「 引き分け戸型サッシ 」の引き分けガラス戸は両袖のFIX窓サッシ外側にレールが有りそのレールでスライド致す物を採用致します。その理由はサッシ窓のスライドするガラス戸はサッシ内側( 室内側 )に有りますと,強風を伴った雨が当たった時に室内に雨水の侵入する恐れが有るからです。この事は設計のイロハです。そして網戸の位置はガラス戸外側にもう一本のレールが有りそのレールに立て入れられています。そう致しませんと引き分け戸を1枚だけ開けた時に網戸を1枚だけ閉めても隙間ができないので蚊が入ってこないのです。

私がこの件を更に詳しく御説明致しますと,このコラムを読まれている方々にとっては余計に分り辛くなりそうなので,とりあえず「 引き分け戸型サッシ 」の引き分けガラス戸と網戸のレールは両方共外側でないとダメと頭の隅に覚えておいて下さい。

ちなみに,このマンションの様に「 引き分け戸型サッシ 」の開口部ワイド寸法が大きい場合は「 プリーツ型網戸 」( アコーディオン網戸とも呼ばれ網が蛇腹状の網戸 )設置が難しいケースが多いので普通の「 スライド型網戸 」を設置するのです。

この新規分譲マンションデベと設計者のレベルの低さが,この様な「 引き分け戸型サッシ 」採用とモデルルームでの網戸隠しで,判断できました。

最近,つくづく感じますのはデベの技術屋とマンション設計者の技術レベルが極端に二極化している事です。レベルが高いデベや設計事務所は常に新人研修等を行い,設計のイロハを継承し,また設計基準書を改訂しています。レベルの低いデベや設計事務所はその様な事をほとんどしていませんので,竣工引渡し後に購入者が入居されると,直ぐにクレームが発生し,どんどん信用を落としていくのです。

これからマンションを購入される方は,上記の件を見極められる知り合いの建築関係者に良くチェックしてもらう事をお奨め致します。

連載コラム

特集

もっと見る