内覧会で指摘する理論矛盾の一例

先日の「 内覧会同行 」チェックでのお話を致しましょう。

私の「 内覧会同行 」チェックはいつもお話しています様に「 傷 」や「 汚れ 」のチェックは主に依頼者に行って戴いています。しかし「 傷 」か「 汚れ 」かを判断しかねる箇所は私が見ます。

そして,私が見ても「 傷 」か「 汚れ 」かが判断不可能な場合は,同行して戴いているゼネコンの方にクリーニング屋さんを呼んでもらい,その住戸に来て,その箇所を清掃し,「 汚れ 」が落ちない場合は「 傷 」として修正工事を依頼致します。

「 傷 」や「 汚れ 」のチェックも大切ですが,私は建築の設計屋なので「 内覧会 」でそのマンションの1住戸内で設計上の理論矛盾が有った場合,理論矛盾を指摘し解消して戴く様に是正工事を御願い致しております。今回はその一例をお伝え致します。

私が先日「 内覧会同行 」チェックを行ったマンションはとても細部に気を遣っており関心致しましたが,設計上の理論矛盾が有りましたのでその事を具体的に御説明致します。

理論矛盾を起こしていた箇所は収納扉の丁番です。

キッチンセット及びその吊り戸棚の扉や洗面化粧台の扉は「 ソフトクロージング丁番 」を採用していましたが,他の収納扉の丁番は「 ソフトクロージング丁番 」を採用せずに「 スプリング付き丁番 」だけでした。この件は収納扉の閉まり方が設計上2種類になっており理論矛盾を感じました。

マンションの収納部分の工事は約15年位前より大工工事で無く,家具屋に工場でボックスと扉を製作させ,それらを現場に搬入し据え付けさせている家具工事なのです。ですので家具屋に発注する時の製作図に設計者が扉の一番上の丁番は「 ソフトクロージング丁番 」と記入すればよいのです。

今回の理論矛盾はそれを怠って,キッチンセット及びその吊り戸棚や洗面化粧台の製作図のみ,扉の一番上の丁番は「 ソフトクロージング丁番 」と記入してしまったミスだと私は判断し,事業主に申し上げました。

マンションのキッチンセット及びその吊り戸棚や洗面化粧台も専門メーカーに製作させ,現場に搬入し据付させています。建築工事ではこれらの専門メーカーは家具工事のジャンルなのです。同じ家具工事で製作図に異なる閉まり方をする丁番を選択されるのは明らかに設計者の思想が統一されていない理論矛盾なのです。

ちなみに洋室等の収納扉に普通の「 スプリング付き丁番 」だけを付けますと,扉を閉めた時に「 パーン 」と大きな音が発生致します。特に両開き扉の場合,2枚共開いて片方を閉めますとかなり大きな「 パーン 」という音が致します。

キッチンセットやその吊り戸棚扉及び洗面化粧台の扉に「 ソフトクロージング丁番 」が付いていない場合も同様な現象が起きます。

「 ソフトクロージング丁番 」が付いていない場合,入居者が深夜帰宅し,背広を脱いでハンガーに掛けワードローブ( 洋服収納 )の扉を開けハンガーパイプに吊し,扉を閉めた時には先程の「 パーン 」という音が上下左右住戸へも響いて聞えるケースが多発したのです。これがアチコチのマンションでかなりクレームになったのです。

私は「 内覧会同行 」チェックで4~5年前頃からこの件は常に是正を指摘していました。

若干その甲斐がありまして,最近の良心的な事業主の新規分譲マンションではキッチンセットやその吊り戸棚の扉及び洗面化粧台の扉や各収納扉には「 ソフトクロージング丁番 」を採用し設置する様になってきました。

通常,キッチンセットやその吊り戸棚の扉及び洗面化粧台の扉,各部屋の収納の扉には,扉1枚につき2~4個の「 スプリング付き丁番 」が設置されています。

その内の1個の「 スプリング付き丁番 」を「 ソフトクロージング丁番 」に変更すれば良いのです。「 スプリング付き丁番 」を「 ソフトクロージング丁番 」しても1個の差額は僅か約400円程度です。1住戸の収納扉の数はキッチン等を入れて数えても約20枚程です。そう致しますと1住戸当り工事原価で8千円上昇ですので販売価格では1万2000円~1万5千円程度,住戸の販売価格が高くなります。

例えば,1住戸の価格が3,500万円であれば約3,502万円になる勘定です。100戸のマンションであれば工事費が80万円高くなり,販売価格は大雑把に計算すれば総額で200万円増える事になります。

結論を申し上げますと,私は先日「 内覧会同行 」を行ったマンションの事業主の方に理論矛盾を御説明し,全ての収納扉の一番上の丁番を「 スプリング付き丁番 」から「 ソフトクロージング丁番 」に変更する様にお願いを致しました。

これを御読みになった皆様の中には「 碓井は細かい事に拘り過ぎる 」と思われる方がいらっしゃると思いますが,夜中に隣戸の収納扉が「 パーン 」という大きな音を響かせれば
熟睡できません。マンションは「 共同住宅 」ですので,設計者が住戸内の生活音が隣戸等に伝わらない様に細かい所まで配慮すべきです。

尚,参考にこのコラムの239号『 「ソフトクロージング」の収納扉 』を御覧下さい。URLは下記です。

https://s.sumai-surfin.com/columns/category/50/239

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