2010年は設計者の正念場

皆様,新年おめでとうございます。

本年も「住まいサーフィン」の「良識あるマンション指南」をよろしく御願い申し上げます。

さて,年初ですので小生が一番詳しく知っている「建築設計業界」の現状を御説明致します。

昨年の2009年,「建築設計業界」にとってはとても厳しい年でした。

「公共施設」「ショッピングセンター」「事務所ビル」や「ホテル」等の設計依頼はリーマンショック以降は極端に減り「老舗大手設計事務所」でさえも「マンション」の設計を積極的に受注していました。

通常「建築設計業界」では「老舗大手設計事務所」は「マンション」の設計をあまり行いません。理由は「マンション」設計及び設計者を「公共施設」「ショッピングセンター」「事務所ビル」や「ホテル」等の設計及び設計者より下に見て「見下して」おりプライドが高いのです。

しかし,2009年は「公共施設」「ショッピングセンター」「事務所ビル」や「ホテル」等の設計がほとんど無いので「老舗大手設計事務所」も「マンション」の設計を受注しなければ立ち行かなくなったので,富士山より高いプライドを捨てて「マンション」の設計をかなり強引に受注していました。

その影響で,2009年は所員が10人~20人程度の小さな設計事務所はかなり「ドボン」( 倒産 )致しました。ちなみに私と懇意の小さな「設計事務所」2社が「ドボン」致しました。

マンションの設計を専業にしていた設計事務所は今までのデベとの関係やしがらみで何とか仕事を依頼されて「ドボン」せずに助かりましたがもう「虫の息」状態です。

不動産業界では「マンション」の設計料は総工事費に対して2.2%~3%位の金額が常識になっています。「マンション」の設計料は,先程の「公共施設」「ショッピングセンター」「事務所ビル」や「ホテル」等の設計料より格段に低く,作業量はとても多く人件費や経費がかかるので大変です。

良い商品企画,プランのマンションを事業化しているデベはこの倍位の設計料を払って頂けますが,ほんの数社です。この様なデベの社員は発注者として威張らずに設計者と対等に接してくれますので設計者も「やりがい」が有り,十二分の力を発揮致しています。

ここで設計料の試算をしてみましょう。ファミリーマンションで総戸数50戸の総工事費は約8億円弱位です。そう致しますと工事費に対して3%の設計・監理料は約2,400万円程度です。総戸数50戸程度のマンションですと設計と工事監理期間は約2年かかります。1年で1,200万円の収入で人件費,作図費用や諸経費等を引きますとほとんど「赤字」に近い状況です。

その結果,最近のマンションの商品企画やプランに良いものが出て来ないのです。新しい提案の「コンセプト」や「プラン」を創って「プレゼンテーション」を行い,時間と手間をかけてデベを納得させても,なかなか評価されず,設計料もその分,増えないからなのです。

そこで,デベが今まで使っていた「住戸プラン」を「御指示」通りの配置で設計し,確認申請を取得し,工事監理をざっと済ませてデベの言いなりに動いて何とか赤字から逃れているのが実情です。

2010年もこの様にしていますと「設計事務所」は自滅の道を辿るでしょう…。また,その様な「設計事務所」に設計を依頼していたデベも危ういと思います。

デベは「設計者」を本来は,建築家として「プランナー」「デザイナー」であると期待し設計を依頼するべきだと思います。

その期待していた「設計者」が商品企画時点で何も新しい「コンセプト」や「プラン」を提案してくれなければ,その「設計者」や「設計事務所」と付き合う意味が無いのです。

極端に言えば,何でもデベの「指示」通りに設計してくれる「ゼネコン」に「設計・施工」で依頼した方が,設計料は安上がりです。クレームが出ても責任の所在は1社ですし…。

但しデベの「指示」通りに設計してくれる「ゼネコン」に設計・施工で依頼した「マンション」には何の魅力や目新しさは無いものが多いと思います。

2010年は「マンション」設計を主にしている「設計事務所」は正念場です。デベの言いなりに仕事をしたら見放されます。分譲マンションで顧客の求めているものは「何か」を根本から見直して,デベに対して新鮮な「コンセプト」を提案し,それに基づいた「プラン」を「プレゼンテーション」して生き残るしか無いのではと危惧しております。

最後に,この様な「プレゼンテーション」を受け入れてくれる優秀なデベの見分け方をお教え致します。

インターネットでデベの物件のホームページを開いて下さい。物件のホームページの「物件概要」欄を見て下さい。この「物件概要」欄に「設計者」か「設計事務所」の名前を載せていない様なデベは「設計者」や「設計事務所」を重要視しておらず「代願屋」( 建築確認申請の提出,受理を専門に行っている設計事務所 )程度にしかみていない傾向が多いので,パス致しましょう。

優秀なデベはインターネットの物件ホームページの「物件概要」には必ず「設計」という欄を設けて「設計者」か「設計事務所」の名前を入れています。その様なデベと付き合うとお互いに向上できるので良いと思います。

これから,マンション購入予定の方にも参考になるのではないでしょうか…。

連載コラム

特集

もっと見る