「建築設計契約」が「請負契約」になりました

今までは「建築設計契約」は「委託(準委任)契約」であったのが,9月初旬に「請負契約」に相当との判断が裁判所の判決で確定致しました。

この事でマンションの設計の質が若干上がりますので,今回はこの件に関しての御説明を致します。

「建築設計契約」が「委託(準委任)契約」から「請負契約」になりますと,どの様な違いが生じるかを具体的に申しあげます。

この相違点が,「日経アーキテクチュア」に載っていましたので簡略して下記に記しました。

■設計業務に於ける「請負契約」と「委託(準委任)契約」との相違点。

 A:請負契約(設計業務)
  
  1、設計者が設計を完成してから,発注者がその設計の結果に対して報酬を払う契約。

  2、設計業務が完成した時に,設計者は報酬を受け取る事が可能。

  3、設計の完成までは債務不履行責任を有する。設計完成後は,故意や過失の有無を問わず,
    成果物(設計図書等)に瑕疵があった時は設計者が責任を負う。

  4、設計が完成するまでの間に,相手方に債務不履行が生じた時は契約を解除でき,発注者は設計者の
    損害を賠償すればいつでも契約を解除する事が可能。
    設計の完成後,発注者は設計に瑕疵が有り,その瑕疵の為に目的を達成する事が不可能な場合には
    契約を解除できる。

 B:委託(準委任)契約(設計業務)

  1、発注者が設計の実施を設計者の判断を信頼して委託する契約。

  2、設計の途中で契約が終了した場合でも,設計者は報酬を受け取る事が可能。

  3、設計者は専門家としての高度な注意義務を負い,この注意義務が果たせなかった為に発注者に損害が
    生じた時には設計者は債務不履行責任を負う。

  4、設計者からも発注者からも,いつでも契約は解除可能。
    但し,相手方に不利な時期に契約解除した時は,相手方の損害を賠償しなければならない。

上記の相違点を見比べますと「請負契約」ですと,発注者(デベロッパー)が設計途中で物件の進行を頓挫させた時に,設計者はいままでかかった経費を回収できない事態が起こりうる事があります。

この御時世ですので,デベは新規分譲マンションの計画を中止したり,見直す事が多々生じています。その場合「請負契約」では中止時点までの経費は払ってもらえないケースが出てくる恐れが有り,中小の設計事務所では死活問題です。

しかし,設計契約が「請負契約」になった方が新規分譲マンション購入者にとってはメリットが有ります。

理由は上記AとBの3番目の項目です。「請負契約」では「設計完成後は,故意や過失の有無を問わず,成果物(設計図書等)に瑕疵があった時は設計者が責任を負う」となっていますが「委託(準委任)契約」では「設計者は専門家としての高度な注意義務を負い,この注意義務が果たせなかった為に発注者に損害が生じた時には設計者は債務不履行責任を負う。」と微妙に責任義務が異なっています。発注者(デベ)やマンション購入者側に立って考えますと設計契約は「請負契約」の方が良いのです。

私は中堅デベの「設計監修」や「設計コンサルタント」を行なっていますが,設計者の提出図面をチェックして,時々感じますのは「設計者の技量不足で無責任」な図面を書く設計者が居る事です。同業者として恥ずかしい限りです。

通常,デベがその様な設計事務に設計依頼しなければ良いのでは…と思われますが,この「技量不足で無責任」な設計事務所はマンション用地をデベに紹介し,見返りに設計の仕事を確保していますので,デベもリストラできないのが実情です。

しかし,今後は裁判所の判決に依り,今後のマンションの設計契約は「請負契約」になり「技量不足」や「無責任」な設計をしていた設計事務所は淘汰され,マンションの質が向上するでしょう…。

そして,責任有る良い設計をする設計事務所が生き残り,クレームの出ない良いマンションが多く設計され建築される様になるでしょう。

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