中古マンションの盲点

先日,富裕層の方から中古マンションの「現地同行」チェックを依頼され,今回は対象物件のびっくりした事をお話いたします。

立地は港区の高級住宅街で地下鉄の最寄り駅より約徒歩7分位で,周辺環境はとても素晴らしい所でした。

その中古マンションは総戸数5戸でその内の2戸はオーナーの住戸で残り3戸が高級外人賃貸マンションになっていました。

竣工後20年経っている割には手入れが行き届いて外壁やサッシュもきれいになっていました。

今回,中古マンションとして販売した住戸は外人に貸していました高級賃貸マンション3戸の内の1戸だったのです。

住戸の専有面積は200平方メートル弱,4LDKで,販売価格は約2億円です。販売坪単価を計算致しますと300万円/坪強です。築20年にしてはちょっと高い価格だと感じました。

依頼者の方にお会いして早速,当該高級物件を拝見し,チェック致しました。

住戸内は20帖強のリビングルームと10帖強のダイニングルームとキッチンがあり,それぞれが分離していました。この3室と玄関廊下は空調設備(冷暖房をともなう換気設備)が設置されていましたが,後の洋室4室は冷暖房設備のみで換気設備は設置されていませんでした。

水周りはかなり広いバスルームがありその中に2ボール(洗面器)の洗面化粧台,タンク一体型便器と大きな洋式の底の浅い浴槽が設置されて,洗い場が無いので完全に外人向けのつくりだと感じました。

また,もう一つバスルームが有りそれは14帖強の主寝室に付いていました。洗面化粧台,タンク一体型便器と洋風浴槽が有り高級ホテルの客室と同じ様になっていました。

さて,ここで依頼者が先程の広いバスルームを浴室と洗面脱衣室に分けたいのですが可能ですか…と私に質問してきましたので,仲介者に事前に用意しておいてもらった竣工図をチェック致しました。

断面詳細図,構造図内のスラブ(コンクリート床板)段差や給排水設備図を丹念に見ましたら,この高級マンションは賃貸仕様だったのです。

すなわち住戸内の床の仕様すべてが「直床」で排水管等は個々の場所でスラブ貫通し,下階住戸の天井裏で横引きして竪排水管に接続していたのです。

この設備配管ですと横引き排水管が詰まったり,横引き排水管を交換する時は下階住戸の天井の一部を壊さないと改修工事ができません。

上記の理由で,依頼者の要望するバスルームのリノベーションはほとんど不可能です。

分譲マンションは通常「直床」仕様でも水周り部分だけはスラブを下げて,スラブの上で横引き排水管を配管して竪排水管に接続しています。

その様に致しませんと,横引き排水管が詰まったり,交換したりする時に自分の住戸内で改修工事ができないのです。

ですので,この高級マンションは賃貸を目的に設計されていましたので住戸内の区分所有の専有部分と共用部分の区分けが,なされていなかったのです。

ここで,誤解を招くと問題になりますので申し上げておきますが,分譲マンションでも最下階の住戸の排水は排水管をスラブ貫通し,最下階住戸スラブ下で配管致します。

私が昔,グァムでコンドミニアム(分譲アパートメント)を設計した時と全く同じケースです。当時,アメリカの区分所有に関する規定では各住戸の天井裏のスペースは共用部分だったのです。

この様な理由で私は「現地同行」依頼者に,この物件の購入はお奨め致しませんでした。

依頼者の方は「中古マンションを購入する前に専門家にチェックしてもらって良かったです。素人では先程の件は全く気づかずに分かりませんからね…。」と私に感謝してくれました。

特に高級な中古マンションの場合は購入前に建築等の専門家にチェックを依頼した方が安全です。

手付金を払ってからでは「手遅れ」になりますのでその前に「現地同行」チェックを依頼して下さい。

今回の「現地同行」チェックの依頼者は手付金を払う前に私に依頼して頂いたので,助かったのです。

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