エレベーターの安全性の向上

近年,我国のいたるところで地震が多発しています。それに合わせてか,国土交通省が「エレベーターの安全に係る技術基準の見直しについて」と題して建築基準法施行令を改正し昨年の平成20年9月19日に公布し,今年平成21年9月28日より施行される様になりました。国土交通省のHPに概要が載っています。URLは下記です。

http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_fr_000012.html

内容は簡単に申し上げればエレベーターの安全に関わる技術基準の強化を致しました。今回の建築基準法の一部改正のエレベーターに関する大きなポイントは下記の2点です。

1つは「戸開走行保護装置の設置義務付け」で,もう1つは「予備電源の設置」による「地震時等管制運転装置の設置義務付け」です。

最初の1つ目の「戸開走行保護装置の設置義務付け」に関して判り易く御説明致します。

「戸開走行保護装置」とは,エレベーターの扉が開いたまま走行してしまうことを防止する安全装置です。従来からの安全装置に追加され,駆動装置の故障対応としてのブレーキの二重化等や制御器の故障対応として戸開走行を検出してエレベーターを停止させる安全回路が付加されたのです。

もっと判り易く御説明いたしますと今回は機械的安全装置に加え電気的な安全装置の追加により,制動装置が二重化されより安全・安心なシステムとなったのです。

次に2つ目の「予備電源の設置」による「地震時等管制運転装置の設置義務付け」に関して判り易く御説明致します。

「地震時等管制運転装置」とは地震等が発生した際に,かごを最寄りの下階へ停止させる管制運転装置の事です。今回の改正により「P波感知器付地震時管制運転」と「予備電源の設置」が併せて義務付けとなったのです。

地震には初期微動のP波と振動のエネルギーの強いS波(本震)があります。「P波感知器付地震時管制運転装置」は,S波より伝達速度の速いP波をセンサー(感知器)がキャッチしてエレベーターを最寄りの下階に停止させるのです。ですので更に安全性が高まったのです。

また地震等が発生した際には,同時に停電となることが予想されますので「予備電源の設置」で,停電した場合でも予備電源で安全に最寄りの下階へ停止し,かごの扉が開きまして閉じ込め防止を致すのです。

今までのエレベーターは「S波センサー」に依る「管制運転装置」は標準仕様で,「P波センサー」に依る「管制運転装置」と「予備電源の設置」はオプションで事業主の判断に委ねられていました。しかし今回の建築基準法の改正では「P波感知器付地震時管制運転」と「予備電源の設置」オプションでは無く完全に義務付けとなりました。

今回のエレベーターの安全に関わる技術基準の見直しの法改正の中には上記の2点の他にも細かい事項が沢山有りますがその件に関しては省略させて戴きました。細かい部分を知りたい方は国土交通省のHPの新旧対照条文を御覧下さい。URLは下記です。

http://www.mlit.go.jp/common/000034863.pdf

また,今回のエレベーターに関する法改正には該当しない特殊なエレベーター等があります。それらのエレベーターは第一法規株式会社の「建築法規PRO」というサイトで判り易く説明していますので下記URLより御覧下さい。

https://www.kenchiku-pro.com/news/detail/news_id/000082

この近年は地震が多く今回の法改正は非常に重要ですが,既に設置されたエレベーターに於いては遡及(そきゅう-法律や法律要件の効力がその成立以前にさかのぼって及ぶこと。)されないのが残念です。しかし既存のエレベーターに於いて法改正同様の措置を取らない場合,今後は定期報告等で既存不適格(最新の法令に基づき)と報告されます。

お金はかかりますが,タワーマンションや中高層マンションに住まわれている方々は大きな地震時にエレベーターが停止してかご内に閉じ込められる恐れがあります。なるべく早く今回の法改正の中の大きな2点を管理組合で協議し,リニューアルをした方が良いと私は思います。

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