「EXP.J」への配慮

マンションの販売図面集の各階平面図に「EXP.J」という文字が載っている事がありますが,この字は何を意味しているのか御存知ですか…?

エキスパンション・ジョイントという言葉の略字です。

では「EXP.J」はどの様な場所に,何の目的で使われているかを御説明致します。
「EXP.J」は「L字型配棟」や「コの字型配棟」等のマンションの建物と建物の向きが異なる場所に主に使われています。「I字型配棟」でも建物の間口長さが50m~70m以上になりますと,中間付近で「EXP.J」を設けます。

「EXP.J」を設置する目的は建物と建物の向きが異なりますと,地震時に揺れ方や揺れ方向が異なります。ですので,建物の向きが異なる箇所で一旦建物を切り離し,地震時に向きが異なる建物接続部分の損壊を防いでいるのです。また間口長さが長い建物は地震時に上から見ますと波を打つ様に変形致しますので,それを防ぐ為に50m~70m以内に「EXP.J」を設けて建物を切り離し損壊を防ぎます。

簡単に申し上げれば,電車の車両と車両をつないでいる連結器上の場所の様なものです。

主に向きの異なる建物と建物を切り離して隙間を設けた所が「EXP.J」なのです。
この隙間の幅は建物の高さに比例して広くなりますが,最大で20センチ程度です。

通常の10階建てのマンションで「EXP.J」の隙間幅は10センチ~15センチ位です。
それ以上高い建物になりますと「EXP.J」の隙間幅は更に広がります。

さて,ここで警鐘を鳴らしたいのは「EXP.J」の隙間をどの様に塞ぐか…です。
外廊下に設置されています「EXP.J」の隙間幅が10センチ超で床のみが電車の連結器の上の踏み板の様にしてありますととても危険です。何故ならば「EXP.J」は外廊下の手摺壁にも10センチ超の隙間が設けられているからです。

10センチ超の隙間は乳幼児がすり抜けてしまいとても危険です。ペット可のマンションでは生後3~6ヶ月程度の犬や猫はすりぬけて転落してしまいます。

そこで外廊下の「EXP.J」部分の手摺壁の隙間が10センチ超の所には設計時点で配慮が必要です。「EXP.J」部分の手摺壁の隙間が10センチ超の所に何も配慮していないマンションは論外です。

そこで,よく見かけるのがアルミ板やステンレス板を加工し,切り離した隙間の片方の建物の手摺壁に固定して「EXP.J」の隙間を塞ぐ方法です。この方法の塞ぎ方の問題点は固定されていない反対側のアルミ板やステンレス板の端部が手摺壁面と3~5センチ隙間が開き外廊下内側に出っ張って刃物の様になっている事です。

では私が今までに見た配慮の行き届いた手摺壁の「EXP.J」の塞ぎ方とはどういうものかを御説明致します。

直径30ミリ程度のステンレスパイプを高さ1m弱,幅50センチ程度の「コの字型」に曲げ,コの字型の中に直径20ミリ程度のステンレスパイプを縦に5センチ間隔で並べ溶接した物を「EXP.J」の片方の手摺壁面にぴったり設置せずに,3センチ程度浮かして設置した物です。これを見た時は設計者の技量の凄さに驚き,それ以来「EXP.J」設置の外廊下の手摺壁塞ぎはこの方法を真似させてもらっています。

これでしたらマンションという生活する大事な器で入居者が怪我する心配はほとんど有りません。

こういう所に配慮している設計者のマンションは安心できます。


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