便器と「竪排水管」の位置に要注意

洋式便器の排水口の位置が2種類有るのを御存知ですか…?

ひとつは,洋式便器の下に排水口が有るものでほとんどの洋式便器はこのタイプで「下抜き型便器」と呼んでいます。

もうひとつは,洋式便器の後に排水口が有るものです。このタイプは主にマンションの為に作られたものだそうです。この洋式便器の後に排水口が有る便器を我々建築関係の人間は「P型便器」と呼んでいます。

何故「P型便器」がマンションの為に出来たかを御説明致しましょう。

日本では分譲マンションの「区分所有法」に依り,水周りの「横引排水管」は「竪排水管」に接続するまでの間は専有部分の中を通さなくてはならないのです。

もう少し分り易く言いますと,台所,浴室,洗面化粧台,洗濯機パンや便器の「横引排水管」は住戸の床スラブの上の専有部分を通す事なのです。

「区分所有法」では専有部分の範囲は床スラブ上から天井スラブ下までと規定されているからなのです。

ですので「P型便器」ですと排水口が便器の後に有りますので,「横引排水管」を便器の後の排水口に接続して床上数センチの所に露出配管をして「竪排水管」に接続致します。

「P型便器」を採用しているマンションのトイレでは便器の後ろに「横引排水管」が見えます。

さて,本題に入ります。

「P型便器」を採用した場合には設計時点で「竪排水管」の位置が非常に重要になります。
この「竪排水管」の位置に依って排水がスムーズに行なわれずに便器に流した汚物が詰まってしまう事故が起こるケースが有るのです。

今,マンションの購入を検討している建築に素人の方でも判断できる簡単な方法を御説明致します。

まず,販売図面集の住戸平面図(間取り図)のトイレに「P型便器」を採用している場合は便器のタンクの真後(まうしろ)の壁より更に後に「竪排水管」が設置されていませんと,排水障害を起す危険性が有ります。

ですので便器の後の壁より前に「竪排水管」のPS(パイプシャフト)が配置されていましたら「P型便器」か「下抜き型便器」かどちらかですか…と販売員に聞いて下さい。

「下抜き便器」を採用していましたら.トイレの床は「二重床」になっていて,その下のスラブとの隙間に「横引排水管」を通して「竪排水管」に接続しているのです。但し「二重床」上端と床スラブ上端の間隔(高さ寸法)が厳密には23センチ以上確保されていませんとスムーズな排水は期待できません。「横引き排水管」の排水勾配が1/50より水平に近くなり流れが悪くなるのです。この「二重床」上端と床スラブ上端の間隔寸法を販売員に質問して下さい。23センチ未満でしたらそのマンションは避けた方が良いでしょう…。

「下抜き型便器」も「P型便器」も「横引排水管」の勾配は1/50が理想です。100歩譲っても1/75勾配です。「横引排水管」の勾配は斜めになればなるほど,排水効率が良いのです。

さて,ここで「P型便器」であっても便器の背面壁より前に「竪排水管」のPS(パイプシャフト)を配置している設計が結構存在します。その様なマンションは避けた方が良いのでその訳を御説明致します。

「洗い落し式」の「P型便器」ですとPSの位置が便器の背面壁の前に配置されていても「横引排水管」が便器と「竪排水管」に接続可能なのですが「洗い落し式」便器はお奨めできません。

詳しく申し上げますが,便器の汚物洗浄方式には大きく分けて2種類あります。「サイホン式」と「洗い落し式」です。「サイホン式」便器の方が洗浄力が強く洗浄時の音は静かですが高価です。「洗い落し式」便器はただ水の勢いだけで洗浄しますので,時々汚物が便器に附着し,掃除をマメに行なわなければなりません。また,洗浄時の音もうるさいのです。

「洗い落し式」便器は「サイホン式」便器より約2~4万円位安価です。住戸の販売価格では1住戸当たりの価格差は「サイホン式」便器を採用致しますと3万円/戸から6万円/戸「洗い落し式」便器採用マンションより高額になります。

しかし,トイレの便器の掃除を頻繁に行なうのは辛いです。

毎日の生活に於いて,トイレは頻繁に使う所ですので,便器の選定や「竪排水管」(PS)の位置の配置は重要です。
再度申し上げますがこの様なところをきちっとチェックしてマンションを選定してください。

尚,「洗い落し式」便器は汚物の洗浄力が弱く音も大きいので最近,分譲マンションではほとんど採用されていません。賃貸アパートでは未だにかなり採用されているそうです。

トイレに関しては設計者の力量が如実に表れる所なので,私はこのコラムが始まった頃の4号,5号,6号と3回にわたって「トイレを見れば設計者の力量がわかる-1,-2,-3」と書いていますので,そちらも御覧下さい。

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