非常識な地下住戸

「購入相談」で非常識な設計のマンションの購入を取り止めの方向にもっていったお話をいたします。

まず,事の起こりは私のところに先週初めに,5日後の週末にマンション購入の売買契約をするので,その前にそのマンションが購入に値するものかを聞きたいという「購入相談」の依頼でした。

その依頼者の方は40才代後半独身のキャリアウーマンで「購入相談」の日程・時間は5日以内であれば私の時間に合わせるとの事でした。

私は以前,高齢の独身女性からの依頼で売買契約後に「現地同行」チェックをし,図面を隅から隅まで見てチェックリストに点数を付け,その結果が「不可」(秀,優,良,可,不可)になった事がありました。依頼者の女性の方はその結果を見てキャンセルし,「手付金」400万円を捨てました。

私にとっては,その事が未だに「トラウマ」になっております。その後は独身女性が良くないマンションを販売員の口に乗せられて購入契約しない様に,なるべく時間を作って「購入相談」の依頼は受ける様にしております。

今回の「購入相談」の依頼者の「申し込みフォーム」のメールに書いてあった購入予定マンションのHPを見ましたら,私の長年の「勘」でこれは直ぐ御会いして購入取り止めを説得した方が良いと思い,早速先週末の平日の夜,何とか時間調整して「購入相談」依頼を受け御会い致しました。

そのマンションは都内23区の城北部に立地し,売主や設計・施工をしたゼネコンは有名な会社です。今年の中旬に竣工し,現在は在庫住戸を売っていたのです。

御会いして,直ぐに物件資料一式(メインパンフレット,販売図面集や価格表等)を拝見致しまして,購入予定住戸の上下左右の住戸との関連等をチェック致しました。

購入予定住戸は地下住戸で北北西向き1LDKでした。1LDKと言っても1つしかない洋室(寝室)はリビング・ダイニング側からの間接採光で窓がない部屋でした。

まず,この点を指摘しましたら購入相談者はその事は許容範囲だという事でした。

次に左右の住戸の間取りとの関連を見ましたら,その1つしかない寝室の脇が隣戸の浴室で戸境壁のコンクリートの厚さも薄く音の問題を抱えていました。依頼者にその事を申し上げましたら急に顔色が変り驚いていました。

更に地下住戸ですので上階の平面図を見たら「唖然」と致しました。

その購入予定住戸の上は,そのマンションが接している道路からそのマンションのエントランスに出入りする「メインアプローチ通路」だったのです。

この地下住戸の上は毎日人が歩いているのです。悪く言えば「橋の下のホームレス」のテント住居感覚です。寝ている住居の上を人が歩いているのですから…。

この地下住戸の屋根は通路下にあるので防水は傷み易く漏水の恐れが大です。

この事を申し上げましたら「この件には全く気付いておらず,御指摘有難うございました」と言われました。

早速,2日後の「売買契約」は致しませんと販売担当者に電話で申し伝えるとも言われました。

この地下住戸は物件の中でも販売が遅れるべくして遅れている住戸です。この様な非常識な住戸はどんなに値引きしてきても購入すべきでは無いと私は思います。

私もマンション設計歴30年で同業他社が設計したマンションは何百棟と見ていますがこの様な設計のマンションは初めて見ました。設計者の技量と感性を疑ってしまいます。

私はマンションの地下住戸は昔からお奨めいたしておりませんが,予算の関係で購入対象住戸になってしまった場合はその住戸の上下左右や排水系統等がどうなっているかを入念に調べてから購入するか見送るかを判断するのが賢明だと思います。

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