神はディティールに宿る

「神はディティールに宿る」と言う言葉は近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエが残した名言です。彼の代表作品としては,ニューヨークのシーグラムビル(1958年竣工)があり,モダニズムの超高層ビルの中では,最もすぐれたデザインの超高層ビルともいわれています。

この「神はディティールに宿る」という言葉の意味は, 建築家の思いいれは建物の細部(ディテール)にこそ表れるという意味で,建築の世界では今でも使われている言葉です。

噛み砕いて言いますと建築の細かい部分の作りこみや納まりの綺麗さが大事だという事です。

これはどの様な建築物の設計にもあてはまる名言です。

私はこの30年間,マンションを設計していました時には常にこの名言を守り,また後輩に指導いたしました。

例えば全く同じ間取りの住戸プランを設計致しましても,建築の細かい部分の作りこみや納まりが違えば全く異なった雰囲気の空間になってしまうという事です。

具体例の一つを申し上げればマンションの住戸の扉やサッシュ(LDの天井まであるハイサッシュは除く)の上端が全て同じ高さで揃っていると空間がとてもすっきりして品格があると言う事です。玄関扉も収納の扉も全てです。

特に玄関の土間は住戸内の床より3~5センチ下がっていますので,住戸内の部屋の出入口の木製扉の高さより3~5センチ高く(長く)作りませんと上端が同じ高さに揃いません。

また収納扉が天井近くまで有る場合がありますが,その場合は部屋の出入口の木製扉の高さと同じ寸法で切り,そこから上の収納扉は別にして天袋形式にしますと綺麗な納まりになります。

これらの扉の上端とサッシュの上端を同じ高さで揃える事は大変な作業です。サッシュは往々にして大梁の下に設置されていますので,大梁の大きさや階高に関連してきます。構造設計者と事前に密に打ち合わせをする必要が有るのです。

最近のマンションを見ますとこの事にはあまりこだわっていません。例え1住戸の価格が2億円以上のマンションでも細部の作り込みや納まりに「こだわり」が無く品格の無い空間に仕上がっているので,同じ建築家として情けなくなります。

事務所ビルの設計も同じで,このコラムを御覧戴いている方の会社の廊下の扉を良く見て下さい。
事務所内の扉は絶対に内開きです。そしてその扉には自動で閉まるドアークローザーという物を付けますがこれが室内側にあればまともな設計者ですが,廊下側に付いていれば三流の設計者です。

更に申し上げれば,マンションの設計者は特に建築の細かい部分の作りこみや納まりに「こだわり」を持って良い空間を創出してもらいたいものです。

マンションの住戸内の細かい部分の作りこみや納まりが良い空間であれば自ずと入居された方やその方の御子様の感性に良い影響を与えます。

連載コラム

特集

もっと見る