工事中にゼネコン倒産の体験談-1

この処,中堅ゼネコンの倒産が増えています。

インターネットで帝国データーバンクの「大型倒産情報」を見ますと,そこそこ名前が知られているゼネコンの倒産が7月と8月中旬までに4社も有りました。

7月には真柄建設,三平建設,多田建設で8月は中旬までに志多組が倒産しています。
これらの建設会社は中堅ディベロッパーの分譲マンションの工事をかなり請負っております。

会社の名前は申し上げられませんが,この4社の中の1社が「東急設計コンサルタント」に私が在籍していた時,設計・監理を行なった分譲マンションの工事中に倒産し大変な目に遭いました。

その分譲マンション,工事請負契約書ではゼネコンA社から売主への引渡し日は1997年8月末でした。処が7月後半に売主の担当責任者から私に電話が有りました。

内容は「碓井部長,今銀行から当社の役員に電話が有り,その現場のゼネコンA社が危ないという情報が入ってきました。早速社内で協議し,建物引渡しを1ヶ月前倒しにして工事費の最終代金を払う事で建物の保全を優先と決定しました。今日は金曜日で来週の月曜日は役員会が有るので火曜日に建物引渡しと工事代金支払いを行なう事にしたので,碓井部長の方からA社に引渡し日の変更と引渡し手続きの書類作製を指示してくれませんか…。この情報は超極秘事項なので当社から指示するとまずいので東急さんの方から適当な理由を言ってA社さんに指示して下さい。御願いします。」との事でした。

私はすかさず「S部長,それなら一刻も早く火曜日にせず月曜日の午後一番の1時にした方が良いですよ。そうされたら如何ですか…?」と言いその日時で売主の会社の了解を取り付けました。

その電話を切った後,直ぐにA社の営業部長,工事部長と現場所長に電話をし「売主の都合で引渡し日が工事請負契約書に書いてある8月末日より1ヶ月前にして欲しいと連絡が入ったので,急で申し訳ないが来週の月曜日午後1時に売主の会社で建物引渡しを行なう事になりました。工事代金の最終金額全てをそちらに支払うそうです。ついては,早急に建物引渡し書類一式を作製し月曜日1時に引き渡しを行なえる様にして下さい。そしてそれらを持参して月曜日1時に売主の会社に来てください。」と申し伝えました。A社の営業部長が「どうしてそうなったのですか…?」と私に聞かれたので「私も理由は聞かされていないが,工事代金の最終代金が予定より1ヶ月前に貰えるのだから,御社にとっては良い話ではないですか…。絶対に月曜日の午後1時に建物引渡しが出来る様に御願い致します。」と答えました。

月曜日の午後1時に売主の会社の会議室に「売主」「設計事務所」「ゼネコンA社」3社の担当責任者が集まりまず売主が建物引渡し書類一式を受け取り,最終工事代金の手形渡しを直ぐ始めました。その5分後に会議室の電話とゼネコンの営業部長の携帯電話が同時に鳴り,そのゼネコンの倒産を知らせてきたのです。本当に危機一髪でした。

A社の営業部長の顔色が真っ青になりました。そのA社が倒産の危機に瀕している事は上層部のほんの少数の人しか知らなかったのです。

建物引渡しが,あと5分遅ければ建物(分譲済みのマンション)の売主への引き渡しはかなり遅れ,更に購入者への引き渡しは何時になるかわからなかったのです。会社更生法の管轄下になっていたのです。引渡し日を火曜日にしていたら最悪だったのです。この事については売主より私は大変感謝されました。

引渡しを受けていた時,現場では私の部下の工事監理者が工事の竣工検査をしている時でした。建物引渡し完了後,直ぐに私は現場に居る私の部下にA社の倒産を伝え,現場に置いてある建材等を業者や職人が持ち出さない様に監視する事を指示致しました。

売主もA社の倒産の知らせを受けて,迅速に警備会社に電話をして引き渡しを受けた建物の敷地の出入口に警備員を立たせ,ゼネコンと設計事務所以外の業者や職人を現場より退場させ誰も現場の敷地内に入れなく致しました。

今後,購入者の内覧会や住戸引渡しを当初のスケジュール通りに行なう為の手配や作業をどうするかが一番の問題で頭が混乱してしまいました。

だいぶ長い文章になってしまいましたのでこの続きは次週にさせて戴きます。

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