「段状マンション」の注意点

私はマンションの最上階住戸は割高な価格で,更に夏とても暑いのであまりお奨め致しません。お金に余裕が有る方には最上階住戸の下の住戸をお奨めしています。

この私のアドヴァイスを受けて6階建ての5階住戸を購入された方より「現地同行」チェックの依頼が有り現地販売事務所で設計図書をチェックしたお話を致します。

依頼者より事前に販売者に設計図書一式を販売事務所に置いておく様に御願いしておきましたが,実際に販売事務所に置いてありましたのは,クリップに挟まれた大事な図面を省いてあるものでした。「矩計図」(かなばかりず-建物の垂直方向の断面を詳細に表し,下地の寸法や細部の納まりまでを示す重要な図面)や「特記仕様書」等重要な図面が沢山抜けていました。

早速,私と依頼者は販売事務所の責任者に御会いして,「やましい事が無ければ全ての図面を見せて下さい」とお願い致しまして,隣接地の工事現場事務所に置いてある製本された設計図書一式を持って来てもらいました。製本図面には「矩計図」等,重要な全ての図面が綴じてありました。

依頼者が購入致しました住戸の上の最上階住戸が少しセットバックしていましたので早速「矩計図」をチェック致しました。

セットバック部分の所の防水をチェック致しましたら「唖然」でした。最上階住戸のメインバルコニーの奥行き(2m弱)の約1/2の部分の下部が依頼者住戸のリビング・ダイニングルームでした。

特に住戸の居室部分上部がバルコニーの場合の防水は「ルーフバルコニー」と同じ仕様でなければなりません。「品確法」(住宅品質確保促進法)に「キチン」と「雨水の侵入を防止する部分」は10年の保証を義務付けています。

処が,このマンションの最上階のバルコニーの防水が「ウレタン塗膜防水」仕様だったのです。「ウレタン塗膜防水」とはコンクリートのバルコニー床に防水性の有るシートも敷かず,直にウレタンを塗布しただけの簡易防水です。保証期間は2~5年程度です。更に歩く場所なのにウレタン防水の上に保護としてのコンクリート(厚さ約8cm以上)も設置していませんでした。

これには私もびっくりで販売者の方に「ここのバルコニーの防水仕様はルーフバルコニーと同じ仕様でなければならないのではないですか…?」と聞きましたが「売主の技術屋がチェックしてOKですから…。」との回答しか有りませんでした。

「ルーフバルコニーの防水仕様」とは簡単に御説明致しますと,コンクリート床の上に「アスファルト防水」を施工し,その上に断熱材を敷き,更にその上に厚さ約8~10cmのコンクリートを敷きます。バルコニーは歩く所ですので下が部屋の場合はアスファルト防水のみでなく,アスファルト防水層を衝撃や傷等から保護する為に防水層の上に断熱材とコンクリートを敷きつめるのです。

この件に関して私は何ゆえにこの場所に「ウレタン塗膜防水」を採用したのかを書面にて回答を要求致しました。販売者の方に契約当事者の会社の社印押印付きの「回答書」の提出を求めました。社印が押印されていない「回答書」では法的手段で争う時には有効ではないのです。

また,この物件は「設計住宅性能表示制度」の適用を受けています。このチェックもよく通ったとチェック機関の審査に疑問を感じます。

先程の「矩計図」を見る限りでは「品確法」を遵守していないのでどの様な「回答書」が出てくるかが楽しみです。

私は「現地同行」チェックを依頼された方に「この防水仕様では漏水の危険がありますので,売主が防水仕様を変更しなければ,この物件は解約した方が良いと思います。先方の瑕疵ですので手付金は戻ると思います。」と回答致しました。

建物の機能の最低線は雨漏りしない事です。

「段状マンション」を購入される場合は事前に防水仕様をプロの方に良くチェックしてもらって自己防衛してから売買契約して下さい。

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