レンジフードの形状,高さをチェック

新規分譲マンションの「現地同行」の依頼が有り,建物の建設予定地周辺をチェックしてから販売事務所・モデルルームを見て,売主の配慮が欠如していたお話を致しましょう。

モデルの住戸は「田の字型」縦長リビングタイプで本来は3LDKであるのを,リビング・ダイニング(LD)脇の洋室を止めてLDと一体にしてLDを広く見せて2LDKにしていました。

この傾向は最近の新規分譲マンションでは専有面積の坪当りの販売単価が高いので住戸を狭くして1住戸の価格を顧客の購入可能金額にする為に,専有面積を狭くする手法で多くの新規分譲マンションのモデルルームで行われています。狭い3LDKですとLDの空間も狭く感じられ開放感が損なわれるのでモデルルームではLD脇の個室を止めてLDと一体にしてLDの広さを演出しているのです。

このモデルルームの台所を見た時にやけにレンジフードの下端が高いのが気になりました。
レンジフードの形状は俗にブーツ型と言って,フードの手前の囲い板の上部が奥まっていて下部が流し台カウンターの先端とほぼ同じ位置にスロープ状になっていました。

私が気になったのは,そのスロープ状の前板の下の方にレンジフードのスイッチが設置されていたのとレンジフードの下端の高さが床面より約1.8m有った事です。
それですと,レンジフードのスイッチの高さがかなり高くなり,背の低い女性では手が届くかが心配です。

「現地同行」を依頼された奥様がレンジフードのスイッチに手が届くか試してもらいましたら,爪先立ちをしてやっとスイッチに触れられる高さでした。その奥様の身長を御聞きいたしましたら153センチとの事でした。

レンジフードのスイッチの位置がこのままですと身長150センチの女性はスイッチに手が届きません。

私は早速モデルルームに居た販売員にこの事を是正する様に申し上げました。
処が,販売員の方は「最近,男性の方からレンジフードに頭をぶつけるから高くして欲しいとの要望が有りこうなりました。」と回答してきました。

私はその回答を聞き「それならレンジフードの形状を変えて,スロープ状の前板を下端から10センチ位の所で直角に奥側に折り曲げてそこにスイッチをつければ背の低い女性でも何とか手が届きますよ。このままでは背の低い女性は毎日調理する度に踏み台が必要になりますよ。」と販売員に言いました。
販売員は「早速,設計者と打ち合わせて善処致します。」と素直に回答してくれましたが,
本来はモデルルームのオープン前に「検討会」と称してチェックすべきです。

これから,高齢化社会を迎え老人は背が低い方が多いのでレンジフードのスイッチの高さや形状は大事なチェックポイントです。

ちなみに私が大手設計事務所でマンションを設計していた時に全く同じ失敗をしてしまいました。

レンジフードを男性でも頭がぶつからない高さに致しますと,背の低い女性ではスイッチに手が届かないという相反する事になり,無い知恵を絞って考えました。

私の考慮した結論はレンジフードにスイッチを付けずに流し台前の壁に通常のスイッチを設置する事です。通常のスイッチのプレートには3個スイッチが入れられるので,オンオフスイッチ,強弱スイッチとレンジフード照明スイッチを付ける様に考えてレンジフードメーカーの技術屋さんに来て頂き可能かどうかとそれによる上昇価格を聞きました。

メーカーの回答はこの改良は可能で上昇価格は1台につき材料費と配線料合計で約2万円アップでした。
1住戸当り2万円アップならば使い易い方が良いと思い,売主に採用を御願い致しました。

結果は競合他社物件との差別化のセールストークになり大好評でした。
その後は私が設計担当したマンションのレンジフードは全てこの方式を採用致しました。

しかし,現在は1円でもマンションを作る為どのマンションも採用していないのは残念です。今後,どこかのマンションで復活したいものです。

マンションのモデルルームを見に行ったらレンジフードの位置,形状やスイッチ位置も忘れずにチェックして下さい。

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