「既存不適格建物」とは

今回は,このコラム145号の最下段の「お詫び」欄で「既存不適格建物」という語句を書き込みましたので「既存不適格建物」とはどういう建物かのお話を致します。

このコラムを読まれている方で「既存不適格建物」という言葉を御存知の方はいらっしゃいますか…?

「既存不適格建物」とは建物を設計した時点の建築法規・条例で「建築確認申請」を提出し,審査され適格として認可された後,建築法規・条例が変更になり,変更後の法規・条例に適合しなくなってしまった建物を「既存不適格建物」とよばれています。

もっと簡単に言えば「既存不適格建物」というのは現行の建築法規・条例に合っていない建物です。地震等で崩壊して立て直す場合には新しい建物は同じ大きさや延床面積等を確保するのが不可能に近いのです。

昭和56年(1981年)の新耐震基準以前に旧耐震基準で建てられた建築物は現在,ほとんどが「既存不適格建物」になります。

また,建物が建っている場所の「用途地域」(建築物の用途・容積・形態について制限を定めた地域)の種類が変更になれば「既存不適格建物」になってしまいます。

私が過去約30年にわたって設計した建物の約2割以上は「既存不適格建物」になってしまっていると思われます。

建物竣工の数年後に高さ制限の強化に依るものや,各地方自治体の建築条例等の改正等で「既存不適格建物」になった建物は沢山あります。

マンションで一番かわいそうなのは「建築確認」の認可を取って着工してから建築の法規や条例が改定になって「既存不適格建物」に該当してしまう事です。

しかし,建築の法規や条例が変更になり制定される場合はかなり以前(約半年位)から,情報が流れてきますので設計者はその辺のアンテナを高く張って情報収集しておけば事前に「既存不適格建物」にならない様な設計が可能です。

「既存不適格建物」は当初から法令に違反して建築された違法建築とは区別されるべきです。

分譲マンションの場合「建築確認申請」の認可を取得してからでないと売買契約はできませんが,この売買契約の時点で建築法規・条例等が改定になり販売するマンションが「既存不適格建物」になると分っていたら,購入者に重要事項説明をしなければならないのです。

この事は宅建業法(宅地建物取引業法)の第35条に書いてあり,もし売買契約時の重要事項説明に「既存不適格建物」になる旨を故意に購入者に伝えなければ営業停止等の罰則規定まで第65条には書いてあります。

分譲マンションの売買契約時に「既存不適格建物」になる旨を購入者に重要事項説明を致しませんと,購入者が契約時に払った「手付金」の倍返しを余儀なくさせられる場合があります。

竣工時点で「既存不適格建物」になる様なマンションを設計し販売するのは売主の良心をはかりかねます。

私は過去15年位前に設計した1件のマンションが危うく竣工時に「既存不適格建物」になりそうになり回避した事があります。それは建築法規の改正ではなく隣地の一部が「開発行為」を申請中で道路になるとの情報を得て売主に報告致しましたら直ぐに「既存不適格建物」にはならない様にとの指示をされた記憶が未だに残っています。そして早急に設計変更をしまして建物の形を「隣地斜線制限」から「道路斜線制限」の範囲内に縮小致しました。すばらしい売主です。

最近,特に東京23区では斜面地や崖地には建築条例を改定していますので購入者も契約前に所轄の役所にヒアリングして自己防衛して下さい。

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