設計基準書の改悪

先月,超大手ディベロッパーのモデルルームを久々に見た時のびっくりしたお話を致しましょう。

日本も温暖化で毎年夏は猛暑になっています。私の幼少の頃の夏は摂氏30℃を越える日数はあまり多く無かった記憶があります。

現在では夏は摂氏35℃を越える日数が多く家やマンションの中に居ますと,エアコンの設定温度を28℃にしても屋外機はフル回転です。それでも中々室温が下がりません。

さて,前置きはこの位にして先日見ましたマンションのびっくりしたお話を具体的に御説明致します。

そのモデルルームは3LDKの「田の字型」プランで横長リビング住戸でした。

3LDKで横長リビング住戸の場合は「中和室」か「中洋室」ができてしまいます。

「中和室」「中洋室」とは直接外部に面さない部屋で,建築基準法では引戸(開き戸はダメ)に依り,リビング・ダイニングルームの窓から間接採光を取れる様にする事と規定されている部屋です。

ここのモデルルームに「中洋室」(約5帖弱)が有り,良く見ましたらその部屋にエアコンが設置できる様,冷媒管やドレイン管の先行配管されていないのです。

販売事務所で頂いた「販売図面集」を開いて「中和室」「中洋室」が有る他の住戸タイプの販売図を良くみました処,「唖然」と致しました。

な,なんと「中和室」「中洋室」には将来設置するエアコンの位置の点線表示が無かったのです。

早速,販売の中堅社員の方に「貴社は中和室,中洋室にはエアコン設置可能ではないのですか?」と聞きました処,「あれ!碓井さん知らなかったのですか?当社は1年位前から設計基準書から中和室,中洋室のエアコン設置可能の件は削除したのですよ。」との回答が返ってきました。

理由を聞きましたら「中和室」「中洋室」にエアコンを設置する入居者が少ないからとの事でした。「少ないと言っても設置する人は居ますので設置不可能では困るのではないですか?」と聞きました。

更に私はその販売員に「地球規模で温暖化しているのに貴社のマンションは中和室,中洋室のエアコンの設置工事は不可能ですね。この工事は先行配管して無ければ後工事(あとこうじ)でもできないのですよ。」と申し上げましたら,「リビング・ダイニングとの間の引戸を開けてエアコンの冷気を入れれば良いでしょう。」と答えてきました。

すかさず私は「真夏に中和室や中洋室で寝る夫婦や子供はリビング・ダイニングの容量の大きい大型(12~13帖用)のエアコンを一晩中稼動させるのですか…?ランニングコスト(電気代)は大変ですね。エコロジーにも反しますね。」と更に申し上げました。

私の記憶では十数年前にこの超大手ディベロッパーが初めて「中和室」「中洋室」にエアコンを設置可能にして先鞭をつけ,「設計基準書」に記載したのです。それ後,各ディベロッパーが私達,設計者に「中和室」「中洋室」はエアコン設置可能にする様に指示が出る様になったのです。

完全にコストダウンの為に「設計基準書」を改悪したとしか考えられません。
私の試算で1住戸当りわずか7万円~9万円の減額です。売値にして1住戸当りわずか10万円~13万円の減額です。それに依って被る不便さは計り知れないのです。

結果,この超大手ディベロッパーのマンションの「中和室」「中洋室」は一生エアコンが設置できないのです。「ブランド」の力が強く会員数が多いので売れてしまうから顧客を軽視しているのでしょうか…?

また私はこのディベロッパーはマンション業界のリーディングカンパニーと思っていますから,他のディベロッパーが追随して同じ仕様にする事を心配致します。

是非,設計基準書を以前の様に戻して“「中和室」「中洋室」にはエアコン設置可能にする事”と記入して頂きたいと切に願います。

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