「キープ・ベーシック」が大切です─2

今回も「キープ・ベーシック」のお話ですが前回読まれていない方に「キープ・ベーシック」という言葉のご説明を再度致します。「キープ・ベーシック」という言葉は直訳致しますと「基本を大切に。」という意味ですが,アメリカ英語では「本物志向。」という意味にもなります。私は「キープ・ベーシック」と言うデザインポリシーで「基本を大切に」と「本物志向」双方共をいつも座右の銘にしております。

前回は「キープ・ベーシック」の「基本を大切に」の御説明を致しましたので今回は「本物志向」についてのお話を致します。「本物志向」とはただ単に建築の仕上げ材料に「本物」を採用すると言う事だけではありません。

確かに最近のマンションの仕上げ材は99%「本物」を採用していません。例えば住戸内の木製扉の表面の仕上げ材は「オレフィン紙」を採用しています。一見,木目ですので本当の木の「突板」(つきいた:木を薄く裂いて削り着色したもの)を貼った様に見えますが,「オレフィン紙」は紙に木目(木目だけではない)の印刷をして燃えても有毒ガスがでない仕上げ材です。

一昔前は1住戸が5千万円以上ですと住戸内の木製建具の表面の仕上げ材は本物の木の「突板」を貼っていました。更に当時の億ションですと充分に乾燥された木の「ムク材」の木製扉が採用されていました。しかし日本の気候には「ムク材」の木は湿気で反ったりし,クレームが多発して余程高級なマンションでしか採用されなくなりました。超高級マンションですと建築工事費も潤沢ですので,充分乾燥された銘木が使えるからです。

仕上げ材で更に申し上げますと壁紙が「クロス貼り」となっていますが,実際は紙に模様を印刷し,「エンボス」(凸凹)を付けその上をビニールコーティングしている「ビニールクロス貼り」です。表面がビニールコーティングしてありますので「手垢」や「汚れ」は消しゴム等で取れて良いのですが「風情」が有りません。やはり本物の布地の壁紙の方が味わいが有ります。

さて,ここで建築の本質的な所の「本物志向」のお話を致しましょう。まず,壁と天井が接する所には本来は「廻縁」(まわりぶち)か「天井目透かし目地」が配慮されていますのが「本物」の納まりです。これらの配慮が無いのは日本のマンションだけです。

海外転勤等で海外のコンドミニアムに住まわれた方はお気づきになっていると思います。ちなみに「廻縁」はアメリカ英語では「クラウンモールディング」と言って壁が天井と接する上端に付ける「王冠の様な繰形状のモール」です。我国でも「高級ホテル」の客室の壁と天井が接する所には絶対に設置してあります。この「廻縁」は単に飾る為の物では有りません。

壁のビニールクロスと天井のビニールクロスは本来明度が違う物を使いますので,異なるビニールクロスが「ドン付け」では見た目が悪いので見切りとしての理由と壁紙同士が入角(いりすみ)で切れていますと乾燥時に隙間が出来てしまいますので「廻縁」を入れていたのです。

最近のマンションの住戸内の壁と天井が接する部分はこの「廻縁」が無いので隙間隠しの為に壁のビニールクロスを1ミリ程度長くし,直角に折り曲げて天井クロスにかぶせて誤魔化しています。

この事はほんの一例ですが最近のマンションや「億ション」でも建築的な「納まり部分」では本来の正当な「本物」の納まりをほとんど行っていません。「本物志向」で作られた空間は子供の感性をも豊かにします。子供の「非行化」を防止する事を謳い文句にしている売主が多々ありますが,是非「本物志向」のマンションを作って下さい。「感性」が豊かな子供は非行には走らないと学者も言っていますので「本物志向」のマンション作りを期待しています。

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