「キープ・ベーシック」が大切です─1

私のデザインポリシー(設計思想)は「シンプル・アンド・エレガンス」と「キープ・ベーシック」です。「シンプル&エレガンス」に関してはこのコラムの#127で御説明いたしましたので今回は「キープ・ベーシック」についてのお話を致します。

「キープ・ベーシック」という言葉は直訳致しますと「基本を大切に。」という意味ですが,アメリカ英語では「本物志向。」という意味にもなります。私は「キープ・ベーシック」と言うデザインポリシーで「基本を大切に」と「本物志向」双方共をいつも座右の銘にしております。

まず「基本を大切に」から具体的にお話致しましょう。マンションとは人が住む「住まい」の集合体です。「住まい」は当然地上に有るものです。竪穴住居は大昔の「住まい」です。

それなのに専有面積稼ぎの結果,最近多いのが地下住戸です。基本的には地下は人間が住まう場所では無いと思います。何千万円もする分譲マンションの住戸が地下に有るのは「住まい」の基本をなおざりにしていると思います。

地下住戸の有るマンションを分譲している事業主は「合法的」に作っているのだから「何が悪い」と開き直ってきますが,地下住戸は生活排水は一旦貯留層に溜めてからポンプアップで行っています。万が一ポンプが壊れたり集中豪雨が降って公共下水道がキャパシティーオーバーになりますと汚水等が住戸内に逆流して大変な事になる可能性が大きいです。

現実に昨年その被害が出ました。地下住戸では本来「フェールセーフ」(事故防御)の対策が大切ですがそれすらしていない物件も多々有りますので要注意です。
地下住戸はその他,湿気等色々問題を抱えています。

マンション設計の「基本を大切に」の第一番目に挙げられる重要項目です。

地下住戸を作らなければ容積や専有面積が稼げない様な用地はほとんどが「第一種低層住居専用地域」です。「第一種低層住居専用地域」は高さ制限が10mの所が多いので3階建てしか建てられず,容積率も100%~150%地域が多く地下住戸は一定の比率までは容積率に参入しませんので地下住戸を作って販売面積を稼がないと収支が合わないからなのです。

私は「第一種低層住居専用地域」で地下住戸を作らなければ収支が合わない様な用地は敷地分割をして戸建の建売事業をするべきだと思っています。

次に,住宅の設計に於いての「基本を大切に」は1階住戸の床の高さが平均地盤面から最低でも45cmは必要ですが昨今のマンションではこの最低寸法が守られていません。この寸法は木造の戸建では建築基準法(但し書き付きですが…)に書いてありますが,鉄筋コンクリート造等には適用されません。

ですからマンションには適用されませんのでたまに見かける分譲マンションでは平均地盤面から1階住戸床面の高さがわずか10cmのケースも有りました。

分譲マンション用地は最低でも100坪(300m2)はないと事業収支が合わないといわれています。300m2の土地ですと敷地の片方の端部の高さと反対側の端部の高さは少なくとも10~20cmは高低差が違います。先程申し上げた分譲マンションでは平均地盤面から1階住戸床面の高さがわずか10cmですので,住棟の片方の端の住戸の1階床面の高さは地盤面の高さより低くなってしまう可能性が大です。

容積や専有面積を稼ぐ為の確信犯的な設計です。1階住戸の床高さより専用庭の高さの方が高い住戸が出来てしまうのです。二重床仕様ですとスラブ上面の高さは地盤面の高さより低く,スラブ面に雨水が浸透して溜まる危険性すら有ります。

これも,マンション設計の「基本を大切に」の第二番目に挙げられる重要項目です。

設計の「基本を大切に」とは最低この事くらいは注意して欲しいものです。さて,「キープ・ベーシック」にはもう一つの意味として「本物志向」が有ると申し上げましたが,今回は長い文章になってしまいましたので次回に詳しく御説明いたします。

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